農業経営課では、経営者マインドを備えた担い手の育成・確保、農業経営の法人化、県内外の農業法人等の参入および異業種からの農業参入を促進するために、「茨城県農業参入等支援センター」と「茨城県新規就農相談センター」の2つのセンターを設置し、就農希望者や農業経営者、参入を希望する企業などへの支援を行っています。
今回は、両センターが行っている支援内容をご紹介します。
茨城県農業参入等支援センターの支援内容
●農業者の経営課題の解決支援(専門家派遣事業)
茨城県農業参入等支援センター(以下 参入等支援センター)が行っている「専門家派遣事業」では、農業者が抱える様々な経営課題を解決するため、経営課題に応じた知見を有する専門家チームを「無料」で派遣しています。
「専門家派遣事業」の流れは図1のとおりです。
「専門家派遣事業」に申請いただいた後、支援対象者に選定されると、農業者ごとに経営課題の分析や支援方針の案を作成するため、中小企業診断士による経営診断(面談)を実施します。経営診断の結果を踏まえて、課題解決に適した専門家チームを編成し、専門家を派遣します。
経営課題ごとの専門家派遣の例については、表をご覧ください。
専門家 | 経営課題 | 支援内容 |
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●法人化を検討しているが、どのようなメリットがあるか知りたい ●経営目標を達成するため、専門家からの助言が欲しい |
●経営理念の策定支援 ●事業計画の作成支援 ●新事業の立上げ支援 |
|
社会保険労務士 | ●新規雇用を検討しているが、必要な手続や契約方法が分からない ●良い人材を雇用するために、経営主がやるべきことを知りたい |
●保険に関する助言・支援 ●従業員採用に関する助言・支援 ●従業員育成に関する助言・支援 |
税理士 | ●法人化を検討しているが、税務上のメリット・デメリットを知りたい | ●税務に関する助言 |
司法書士 | ●法人化を検討しているが、必要な手続が分からない | ●法人設立に関する助言 ●定款の作成支援 ●法人の設立登記の申請支援 |
弁護士 | ●第三者継承を検討しているが、必要な手続や契約方法が分からない | ●第三者継承に関する助言 |
農業法人経営者 | ●農業法人の経営者の目線から具体的な助言が欲しい | ●自身の経験に基づく助言 |
農山漁村発 イノベーション 地域プランナー |
●6次産業化を検討しているが、専門家からの助言が欲しい | ●加工施設整備に係る助言 |
また、「専門家派遣事業」では、2023年度までに164経営体からご相談をいただいており、その内訳については図2のとおりです。
相談内容のうち上位3件は、「経営改善」「法人化」「雇用労務」に関する相談であり、これらで全体の過半数を占めています。特に、「『法人化』を検討するにあたり、『経営改善』や『雇用労務』の観点からどのようなメリット・デメリットがあるか、専門家の助言を受けたい」という相談が多く寄せられています。
「法人化」については、2023年度までに109経営体から相談を受けており、専門家派遣事業による支援の結果、38経営体が法人化しました。
「我が家の経営体も法人化すべきなのだろうか」といった、前提条件を整理したいというご相談にも対応可能ですので、お気軽にご連絡ください。
お申込みに当たっては、お近くの農業改良普及センターまでご相談ください。
なお、「専門家派遣事業」がどのようなものか一度体験したい方や、とり急ぎ専門家の助言を受けたい方は、1回限りですが、迅速に専門家の派遣を行う「クイック専門家派遣事業」(無料)も行っておりますので、ぜひご活用ください。
●企業の農業参入支援
参入等支援センターでは、新たに茨城県で農業を開始したい農業以外を手掛ける企業や県外の農業法人を対象に、茨城県での農業参入に向けた相談業務を行っています。相談では、事業計画作成や、農地の紹介、農地借入にかかる手続きに対する助言等、初期相談から営農開始にいたるまでワンストップで支援を行います(図3)。
【主な支援内容】
参入等支援センターが、茨城県での農業参入を希望する企業等に行っている主な支援の内容は以下の4つです。
①事業計画作成支援
栽培品目別の経営指標などを情報提供し、企業の事業計画策定を支援します。作成いただいた事業計画は参入等支援センターにて内容を確認、参入希望企業と打ち合わせを重ねながら、しっかりとした事業計画が作成されるよう助言、支援を行います。
②補助事業の紹介
企業参入にあたっては、大きな資金が必要となる場合もあります。企業の要望に応じて、事業計画に適した活用可能な各種補助事業をご案内します。
③農地マッチング
事業計画に応じた農地を市町村と連携して紹介、マッチングを行います(図4)。
④人材確保支援・販路開拓支援
後にご説明いたします、新規就農相談センターと連携し、新規就農相談センターのポータルサイトで求人情報を掲載したり、就農相談イベントをご紹介したりするなど、人材確保の機会を提供します。また、販路開拓に向け、県主催の商談会などをご案内しています。
【事例紹介】
参入等支援センターの支援で参入した企業の一例
①参入の概要
会社名 | (株)ファーマインド茨城農園 |
---|---|
参入年 | 2022年(令和4年) |
参入地 | かすみがうら市 |
主品目 | ナシ |
経営面積 | 3.5ha |
②参入の経緯
当該企業は青果流通を主業種とする(株)ファーマインドの子会社であり、ファーマインドグループが主導する大規模農業生産プロジェクトの一環として参入しました。
関東近郊で農地を探すなかで、参入等支援センターがまとまった農地を紹介したことで、茨城県への参入を決定しました。
③参入等支援センターの支援内容
参入等支援センターが事業計画に適した農地の紹介を行うとともに、関係機関との調整・顔合わせを実施し、スムーズな参入につなげることができました。参入後は、市役所や農林事務所に支援を引き継ぎ、地元地権者との調整や基盤整備、栽培技術指導などの支援を継続して行っています。
上記の企業以外にも、参入等支援センターのホームページでは、これまでに支援した企業の代表的な事例を紹介しております。ぜひご覧ください。
新規就農相談センターの支援内容
新規就農を希望する方のワンストップ相談窓口として、茨城県新規就農相談センター(以下 新規就農センター)を、公益社団法人茨城県農林振興公社に設置しています。就農希望者に対して、就農相談会の開催や県内就農事例の発信、就農支援制度に関する情報提供等を行い、農業改良普及センター等関係機関と連携して、就農相談から実際に就農するまでの支援を行っています。
① 就農相談・就農啓発
就農相談員が、就農希望者からの様々な相談に応じています。相談は、電話、メール、面談の他、オンラインでも行っています。また、就農相談会、農場見学会、就農セミナー等を開催するとともに、東京等で開催される全国規模の就農イベントにも参加しています(写真2・3・4)。
それらの場で、就農希望者の就農相談に応じるとともに、茨城農業の魅力や就農支援に関する情報を提供しています。
②就農前研修支援
就農希望者の農業の実務に対する理解を深めるため、農業体験やインターンシップができる農業経営体を紹介し、儲かる農業を実践する優れた経営事例を、直接学ぶ機会を提供しています。また、就農に向けて技術や知識を学ぶ長期研修については、就農希望者に対して、就農予定地域や就農形態等に応じて県内の研修機関の紹介等を行っています。
③無料職業紹介
新規就農相談センターを運営している農林振興公社では、農業専門の無料職業紹介事業者として厚生労働省の認可を得ており、就農相談員が、求職者からの就職相談に応じるとともに、県内農業法人等の紹介・あっせん、求人情報の管理を行い、雇用就農を支援しています。
④「茨城就農コンシェル」による情報発信
就農支援ポータルサイト「茨城就農コンシェル」を設置し、就農希望者に対して就農相談会等の案内や県内農業の概況、県内農業法人等の求人情報や就農支援制度に関する情報等を発信していますので、ぜひご覧ください。