国の「植物防疫法」の改正（令和5年4月1日施行）に伴い、各都道府県には地域の実情に応じた「総合防除計画」を策定することが定められました。
茨城県では、化学農薬に依存しすぎない病害虫防除の推進に向け、「茨城県総合防除計画」を令和5年5月24日に策定したところです。
今般、生産現場における最新の病害虫の動向を踏まえ、環境に配慮した適切な病害虫防除に向けて茨城県総合防除計画の改訂を実施し（令和6年7月29日施行）、①145種を超える病害虫の総合防除方法、②侵入を警戒する病害虫への対応方法、③本県における試験研究成果を新たに掲載しました。

防除方法等の適切な選択による環境に配慮した病害虫防除

●145種を超える病害虫の総合防除の方法

「総合防除」とは、抵抗性品種や天敵昆虫の活用、病害虫の繁殖場所となる雑草防除等の防除方法等を適切に選択して行う、環境に配慮した病害虫防除のことです。本計画では、延べ145種を超える病害虫について、防除方法の具体的な選択肢を示し、生産現場での活用を促しています。
今回の改訂では、イネにおける「雑草イネ」や「ナガエツルノゲイトウ」、ピーマンにおける「黄化えそ病」およびハスにおける「スクミリンゴガイ」の「総合防除」について、新たに掲載いたしました。

●侵入を警戒する病害虫への対応方法

本県において特に侵入を警戒している病害虫「トマトキバガ」および「火傷病」についても新たに掲載し、これらの病害虫の特徴や対応方法を示しています。
侵入警戒病害虫がまん延すると、農作物に重大な損害を与えるほか、有用な農産物の輸出を阻害するおそれがあるため、十分な警戒が必要です。
生産者の皆様におかれましては、文末の農林水産省HP（侵入調査事業について）からご覧いただけるチラシ等をご参考のうえ、上記2種類の病害虫を含めた侵入警戒病害虫と疑われる病害虫を発見した場合には、最寄りの地域農業改良普及センター、病害虫防除所へご連絡をお願いいたします。

●本県における試験研究成果

本県研究機関で開発された病害虫および雑草管理に係る研究成果を掲載いたしました。
例えば、トマトでは、重要害虫であるタバココナジラミの天敵昆虫「タバコカスミカメ」について、栽培ハウス内での定着・増殖に影響の少ないトマト育苗終期の薬剤処理方法を、ナシでは、重要病害である白紋羽病の還元型太陽熱消毒による防除効果を、それぞれ示しています。

【本県で定めたサツマイモ基腐病のまん延防止に関する遵守事項】

植物防疫法の改正により、病害虫のまん延を防止するために必要があるときは、生産者が守らなくてはならないルールである｢遵守事項｣を、総合防除計画に定めることができるようになりました。
本県は日本一の産出額（331億円（令和3年））を誇るサツマイモの産地であることから、まん延すると特に影響が大きい「サツマイモ基腐病」の発生拡大を防止するため、茨城県総合防除計画の策定時に、サツマイモ生産者の遵守事項として以下の5つのルールを定めています。

・サツマイモ基腐病のまん延防止に関する遵守事項

①県が実施するまん延防止のための調査に協力する
②本病の発生を確認した場合には、関係機関へ連絡し、関係機関の指導の下、発病株を抜き取り、圃場（苗床を含む）外に持ち出す
③本病の発生圃場では、2年間、サツマイモを作付けしない （関係機関の指導の下、栽培管理する場合を除く）
④本病の発生圃場から種イモを採取しない
⑤本病の発生圃場では、発生の拡大がないことを確認する
これらは、サツマイモ基腐病のまん延を未然に防ぐとともに、万が一発生した場合でも迅速に発生源を特定し、本病の拡大を防ぐために必要な措置であり、本県でサツマイモを生産する全ての方々が守らなくてはならないルールです。
なお、遵守事項については、県の指導および助言を経てもなお、適切な対応をとらず、農作物に重大な損害を与えるおそれがある場合には、県は勧告、命令を行うことも可能で、この命令に違反すると30万円以下の過料となる場合があります。
以上の対応により、全国屈指のおいしい茨城県産サツマイモを重要病害から守り、安定生産できる体制を維持することで、本県産サツマイモの評価を向上させ、さらなる産地の発展につなげてまいります。

詳細は、茨城県と農林水産省のHPをご覧ください。
茨城県総合防除計画/茨城県
植物防疫法の改正について：農林水産省
侵入調査事業について：農林水産省