また、茨城県では儲かる農業の実現に向け、生産農業所得の向上に取り組んでおり、高収益作物の導入を推奨しています。その品目の一つがサツマイモであり、青果用、加工用ともに需要が高い品目として注目されています。東京都中央卸売市場では、茨城県産のサツマイモの取扱数量、平均単価はともに上昇傾向で、年間取扱数量は11.5千t、平均単価は277円/kgとなっています(令和4年度市場統計情報より)。また、サツマイモは焼きいもや干しいも、スイーツの原料としての需要が伸びており、さらなる需要増が見込める品目です。
以上の背景から、茨城県では主食用米の作付けを減らし、水田へのサツマイモ導入を推進しています。
サツマイモは自社商品として干しいもに加工
水田でのサツマイモ栽培取組の優良事例として、(有)シャリーを紹介します。(有)シャリーは五霞町にある大規模普通作経営体で、水稲とサツマイモを生産しています(写真1)。令和4年度の品目別の作付面積は、水稲が85ha、サツマイモが13haです。
元々は水稲単作の経営体でしたが、周年雇用の面などから、10年ほど前にサツマイモを導入しました。収穫したサツマイモは、自社で干しいもに加工して周辺地域の道の駅等で販売しています(写真2)。また、近年では規模拡大に伴い、加工業務用の出荷も行っています。
排水対策のポイント
水田でサツマイモを栽培する際に課題となるのが、圃場の排水性です。土壌水分が多い圃場で作付けすると、湿害により十分に肥大せず収量が低下するほか、病害虫の影響を受けやすくなるため、(有)シャリーでは以下のような排水対策を行っています。
①排水がよい圃場の選定
周囲の圃場よりも高い位置にあり、比較的水はけがよい等、土質や周辺環境等の地理的な条件を考慮して圃場を選択して作付しています。
②畑地転換後の圃場の整備
水田から畑地に転換し作付けする際は、サブソイラ(深さ25cm)を1圃場あたり2~3回施工します。併せて、作付け前にレベラーを用いて1000分の1(100mで10cm)程度の傾斜を圃場内に作り、地表の水が圃場外に流れるようにしています。
圃場の周囲の排水対策として一般的には額縁明渠が用いられますが、五霞町は周囲に水田が多く、雨が続くと明渠を超えて周囲から水が浸入してくる場合があります。そのため、周囲の土を盛り固めて堤防のようにすることで圃場内に水が入ることを防いでいます。
③栽培期間中の排水対策
夏期に発生する短時間の集中豪雨への対策として、6月下旬~7月上旬に雑草防除を兼ねた中耕を行い、圃場の畝間に深さ20cm程度の明渠を施行しています(写真3)。イメージはネギの栽培期間中に行う土寄せです。
注意点としては、マルチの上に土を盛るような状態になるので、ポリマルチを使用している場合はマルチ回収の作業が難しくなります。(有)シャリーでは生分解性マルチを使用しているため、マルチの上に土が盛られた場合でも問題なく収穫作業に移ることができます。
これらの排水対策を行うことで、水田からの転換畑であっても県の平均収量である2.5t/10aと畑地と同等程度の収量を確保することができます。品質についても、A品率60%以上と一定の品質を確保しています(写真4)。
興味がある方はさらに詳しく
農業総合センターのHPで「再生農地におけるカンショ栽培事例集」を公開しています。圃場選定のポイントや陸田を含む排水不良地での栽培事例についての記載もありますので、興味がある方はこの記事と合わせてご覧ください。