アドバンフォースグループは、傘下に①株式会社茨城プラネッツ福祉センター、②株式会社茨城県民球団、③株式会社アドバンフォースの3つの会社を保有し、多岐にわたる事業を通じた地域貢献を目指しています。
①株式会社茨城プラネッツ福祉センターは障害者就労支援施設の運営を、②株式会社茨城県民球団はプロ野球独立リーグ「茨城アストロプラネッツ」の運営を行っています。そして、③株式会社アドバンフォースは農業事業として笠間市(一部水戸市)の約12haの農地でクリを中心に耕作を行い、飲食事業として笠間市にある「kasamarron-cafe」を運営しています。
グループの根幹は、福祉事業であり、「すべての事業は福祉の活躍の場を広げるためにある」と株式会社アドバンフォース執行役員の海老澤氏は話します。
福祉事業と農業事業を繋げ、地域貢献できるように
アドバンフォースグループは、誰もが活躍できるフィールドを広げるために農福連携に取り組んでいます。
福祉分野の抱える問題として、就労・活躍の場が不足していること、賃金が低いこと、地域から孤立しがちであることがあげられます。そのため、誰もが活躍できる機会をつくって地域貢献できるように、グループの福祉事業と農業事業を繋げました。
茨城プラネッツ福祉センターの運営する福祉事業所(就労継続支援A型)は、スキルが高い障害者の方が多く、幅広い業務を担うことが可能です。施設の利用者は社員として仕事に取り組み報酬を得ています。
一方、株式会社アドバンフォースは現在12haの農地を管理し、年間10tのクリを収穫しています。また、OEM(※1)により、自社農園で収穫したクリ7tを含めて年間25tのクリペーストを製造しています。クリペーストは、自社で販売するほか、年間約2万人が訪れる「kasamarron-cafe」で提供されるモンブランなどの加工品に使用されています。
このため農業部門では、事業拡大に伴う労働力不足が懸念されていました。
(※1)OEM:Original Equipment Manufacturingの略であり、他社のブランド名で販売される製品を製造すること
グループの農業部門と福祉部門は、クリの収穫作業はもちろん、ペーストなどクリ加工品の製造、加工品のラベルデザインの作成やカフェでの接客など、様々な仕事で連携し、施設の利用者が活躍できる場を広げてきました。さらに、2024年から2圃場のクリ収穫作業を福祉事業所に全面的に委託し、一歩踏み込んだ連携の取組をスタートさせました。
今後は、グループ内の各種事業間においてさらに農福連携を深めていく予定です。
笠間市からの農地斡旋をきっかけにクリ栽培へ
株式会社アドバンフォースは2015年7月に設立され、2017年に農業事業を開始しました。2018年から本社ビル近くの農園「あすとろファームいばらき」で採れた露地野菜を自社のカフェで提供したり、直売所などで販売していました。
農業に本格的に参入するため、県内でカンショを生産・加工する事業を始めることを考えていましたが、社内に本格的な農業経験者はおらず、大規模な優良農地の確保や農業技術の習得、6次産業化への取り組みなど様々な課題に直面しました。特に、優良農地の確保について難航しました。
そのような中、笠間市から農地の斡旋などで協力を得られることになりました。笠間市農業公社が複数の農地を紹介し、農地の下見にも同行してくれました。その結果、2020年には笠間市農業公社や農地中間管理機構を通して、笠間市内の畑やクリ園を借りることができました。
また、農業参入等支援センターや笠間市、笠間地域農業改良普及センターからは、栽培品目選定や事業計画作成について指導・助言を受け、2021年にクリを栽培品目として、本格的に農業に参入しました。
旧中学校の校舎を活用した6次産業化への挑戦
6次産業化に取り組むため、2022年から旧笠間東中学校の一部を借りてクリペーストの一次加工施設を整備し、9月に稼働開始しました。12月には加工施設の隣にクリ専門のカフェ「kasamarron-cafe」を開業しました。
「kasamarron-cafe」では、オリジナルのクリ加工品メニューが楽しめますが、中でも「和栗モンブラン」は、評価が高く2023年には2つの賞を受賞しました。
一つは、いばらき農の6次化商品コンテストでの特別賞(農業総合センター長賞)として「県産素材賞」を、もう一つは、優良ふるさと食品中央コンクールで国産農林産品利用部門の「農林水産省大臣官房長賞」です。
「和栗モンブラン」は、クリの鮮度を落とすことなく仕上げた自社ペーストをふんだんに使っており、クリの豊かな風味や香りが楽しめ、サクサクのパイ生地や甘酸っぱいベリーソースがアクセントになっている人気商品です。
また、2024年8月には新商品として、マドレーヌとモンブランフラッペの販売を始めました。
さらに、「学校跡地」という特長を活かしたカフェにできないかについても模索しています。例えば、バスツアーの客に栗ご飯のお弁当とモンブランを提供するなど、学校「給食」を大きな付加価値と考えたイベントを企画しています。2024年8月には学校の怪談イベントを開催し、そこでも「給食」を提供しました。
このようなイベントは、今後も続けていく計画です。
カフェ以外の加工品販売について、2023年は自社用に製造していた甘露煮を外向けに販売するため、パッケージや量産体制を検討し商品化に向けて動き出しました。現在は、渋皮煮の販売に向けた取り組みを始めています。
笠間地域農業改良普及センターでは、今後も生産者や関係機関と連携し、「笠間のクリ」の振興、そして誰もが活躍できるフィールドを広げるために支援していきます。