茨城県においては、2020年に新利根川流域を水源とする水田への侵入を確認しており、発生面積は年を追うごとに拡大しています。
当研究所では、2023年度から農作物に対する水田難防除雑草ナガエツルノゲイトウの防除技術開発を目的として試験課題を立ち上げ、現在取り組んでおります。本記事では、2023年度に主要成果として取りまとめた、水田内のナガエツルノゲイトウに有効な除草体系について紹介します。
春の気温上昇とともに生育が旺盛に
茨城県県南地域の水田では、3月下旬頃からナガエツルノゲイトウの出芽が見られます。春先の気温上昇とともに地上部が旺盛に生育し、4月には畦畔に発生した茎が水田内に侵入し始めます。代かき作業に伴い、水田内に発生・侵入した茎は切断され土中に埋め込まれますが、切断茎の節から発根・萌芽して再生します。
夏季は主に地上部(葉や茎)が旺盛に生育し、徐々に地下部(根)に栄養をため込んで、降霜の頃には地上部が枯れて地下部で越冬します。国内では、種子による繁殖は認められていません。
水田内のナガエツルノゲイトウに有効な除草体系
水田内に発生したナガエツルノゲイトウは、有効な除草剤の体系処理により防除が可能です。代かき作業で切断され、土中に埋め込まれたナガエツルノゲイトウの切断茎の節からは、埋め込み後2~3日程度で新しい芽が出て、再生し始めます。再生した芽が5cm以下の時期(再生始期)に、初期剤または初中期一発剤を処理します。続いて、初期剤を使用した場合は水稲移植後20日頃に中後期剤を、初中期一発剤を使用した場合は水稲移植後40日頃に後期剤を処理します(表)。
処理内容 | 除草剤名 | 処理時間 (水稲移植後日数) |
移植後70日目の ナガエツルノゲイトウ残草量 |
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草丈 | 被度 | 地上部重(無除草区比) | |||
初期剤→中後期剤 | ピラクロン1キロ粒剤 |
5/19→6/5 (+4→+21) |
1.3cm | 2% | 15.7g (3%) |
初中期一発剤→後期剤 | アットウZ1キロ粒剤 →ロイヤント乳剤 |
5/19→6/26 (+4→+42) |
1.0cm | <1% | 0.4g (<1%) |
無除草区 | (クリンチャー1キロ粒剤) | 5/28 (+13) |
40.1cm | 51% | 622g |
※表中の除草剤は2024年12月11日現在、「移植水稲」に登録のある剤である
※クリンチャー1キロ粒剤はノビエ防除のため散布した
有効な除草剤の体系処理により、水稲移植後70日目のナガエツルノゲイトウの残草量は無除草の場合に比べて3%以下と高い除草効果を得られます(表・図)。除草剤を使用する際は、ナガエツルノゲイトウの茎葉が水没するよう水深を確保した方が安定した除草効果を得られます。このため、冬季のうちに圃場を均平化しておくことも大切です。
※図中の除草剤は2024年12月11日現在、「移植水稲」に登録のある剤である
※図中の赤字太線は体系処理を実施したタイミングを示す
なお、本稿で記載した除草剤の他にも、ナガエツルノゲイトウに効果が認められている除草剤が公益財団法人 日本植物調節剤研究協会(植調協会)のホームページで「ナガエツルノゲイトウ有効剤として実用化可能と判定された水稲用除草剤」として公開されています。ぜひご参照ください。除草剤の組み合わせ等のご相談は、お近くの農業改良普及センターにお願いいたします。
基本的な対策も忘れずに!
水田におけるナガエツルノゲイトウの防除対策の基本は、「水田に入れない、水田から出さない、水田内で増やさない」ことです。まずは農業用水を介したナガエツルノゲイトウ断片の水田への侵入を防ぐため、給水栓口にネットを設置しましょう。また、畦畔のナガエツルノゲイトウの発生量を増やし、水田内へ拡散させる可能性があるため、刈り払いによる畦畔除草は避けてください。
なお、ナガエツルノゲイトウは多年生雑草のため、発生圃場では複数年の防除が必要です。