茨城県のレンコン生産量は日本一であり、県内の主要産地は霞ヶ浦周辺に分布しています。一方で霞ヶ浦では、窒素による水質の悪化が問題となっています。その一因として、レンコン田からの肥料分の流出が挙げられています。
そこで本県では、レンコンにおける窒素適正施肥技術の開発に取り組み、3つの技術を開発しました(図1)。その結果を取りまとめて「れんこんの適正施肥マニュアル」を作成しましたので、その内容について紹介します。
肥効調節型肥料の使用で無駄のない施肥
レンコン生育中の養分吸収量を分析した結果、窒素吸収量は、生育初期である6月中旬頃までは少なく、8月下旬にかけて大きく増加することを明らかにしました。
そのため、初期の窒素溶出を抑えた被覆尿素が主体の「レンコンキングⅡ茨城プレミアム」「蓮のきらめき」「レンコンアタックⅤ」「えこはす」などの肥効調節型肥料を用いることで、レンコンの窒素吸収パターンに応じた肥料供給が可能になり、無駄の少ない施肥ができます。
石灰窒素の肥効を考慮して肥料費を削減
石灰窒素を春期(2~4月)に施用するとき、レンコンは石灰窒素の約50%の窒素を吸収することを明らかにしました。石灰窒素(窒素成分20%)を100kg/10a施用するとき、石灰窒素の窒素肥効は10kg/10aであり、その分の施肥窒素量を基肥から減らすことができます。
「えこはす」は、石灰窒素の施用を前提としており、窒素成分が9%と低く設計された肥効調節型肥料です。石灰窒素を100kg/10a施用するのに併せて「えこはす」を160kg/10a施肥することで、合計の施肥窒素量は慣行と同様の24kg/10aとなり、慣行施肥と同等の収量を得られ、約10,000円/10aの肥料費が削減できます(令和6年9月試算)。
診断施肥式を活用して適量を施肥
レンコンが吸収する窒素の形態は「アンモニア態」ですが、レンコン田の土壌中アンモニア態窒素量は、圃場により差があります(図2)。
窒素ごとの圃場数の分布(調査数:110筆)
診断施肥技術は、土壌中アンモニア態窒素量を評価し、レンコンの生育に不足している分だけを施肥する技術です。また石灰窒素は、窒素量の半分がレンコンに有効です。それらを考慮して、施肥窒素量を算出できる、診断施肥式を作成しました(図3)。
●実証試験
現地のレンコン田において、診断施肥式により施肥窒素量を決定した診断施肥区と、慣行区を設置して栽培試験を行いました。
診断施肥区の施肥窒素量は5~20kg/10a、慣行区の施肥窒素量は23~24kg/10aであり、診断施肥区における施肥窒素量は、慣行区と比較して22~89%と少なくなりました。また各試験地において、診断施肥区の収量は慣行区と同等以上となることを実証しました(図4)。
●土壌採取方法
診断施肥技術を活用するためには、土壌中アンモニア態窒素を測定する必要があります。そこで身近な器具である移植ごてを用いた、簡易な土壌採取法を開発しました。
一般的に販売されている移植ごてを用い、土壌30cmまでを均一に採取するため、①土壌の0~15cmをすくいます。②次に土壌の15~30cmまでを①と大体同量すくってください。土壌中アンモニア態窒素は、圃場内でばらつくことがあります。そこで圃場の四隅と中心の5点から土壌を採取し、よく混和したものを圃場の土壌サンプルとしてください。
レンコン田の土壌中アンモニア態窒素は、JA全農いばらき分析センターで分析できます。分析には、乾燥前の土と乾燥した後に粉砕した土の2種類が必要です。乾燥前の土は仮比重(土の密度)の測定に使用し、乾燥した後に粉砕した土はアンモニア態窒素の測定に使用します。返却される処方箋には、その圃場の適正施肥量が記載されますので、それを参考に施肥を行ってください。
【参考】「れんこんの適正施肥マニュアル」