イネの穂が本種によって吸汁加害されると斑点米(写真2)を生じ、品質低下(等級格下げ)の原因となってしまいます。イネカメムシは籾の基部を好んで加害するため、玄米基部が変色する斑点米となります。また、他のカメムシよりも吸汁能力が高く、出穂期~乳熟期に本種の加害がはなはだしい場合は、穂が立ったまま不稔となって減収することから、玄米品質だけでなく、収量低下の原因にもなっています。
県内での発生状況
病害虫防除所が毎年8月上旬に水田で行っているすくい取り調査によると、近年、県南地域を中心に発生地点率(※1)が増加し、2021年には県内調査圃場の約3割でイネカメムシの発生を確認しています(図1)。また、すくい取りによる虫数についても、2020年以降増加傾向となっています。
夜行性で昼間は株元に潜んでいるため、日中に見つけることは難しいかもしれませんが、皆さんの地域の水田でもイネカメムシが増加しているかもしれませんので、注意して観察してみてください。
(※1)発生地点率とは、病害虫防除所の圃場巡回調査で、対象病害虫の発生や被害が見られた地点(圃場)の割合
(8月上旬すくい取り、病害虫防除所調査)
どうして増えた?
イネカメムシの増加要因は明らかになっていませんが、温暖化や斑点米カメムシ類を目的とした防除が十分に実施されていないこと、規模拡大等により早生から晩生まで幅広い品種が作付けされ、地域内での出穂期間が広がり、好餌条件となっていることなど、複数の要因が重なっているのではないかと考えられます。
出穂直後の加害で不稔増加
イネカメムシによる登熟への影響を調査するため、放虫試験を行いました。ポットで栽培した水稲をネットで覆い、出穂後にイネカメムシ成虫を雌雄3頭ずつ(計6頭)時期別に放虫しました。成熟期に穂をサンプリングし、籾を分解して不稔程度を調査した結果、穂揃期0~7日後に放虫した区では不稔率が63%となり、他の時期に放虫した区と比較して最も高くなりました(図2)。
(ポットでの放虫試験)
このことから、不稔による減収を抑えるためには穂揃期0~7日後の吸汁加害を防ぐことが重要であり、出穂直後に防除を行うことが大切です。
試験の詳細は、茨城県農業総合センター 令和5年度普及に移す成果に掲載されている「飼料用米の減収を軽減するためのイネカメムシ防除」をご覧ください。