令和6年の病害虫防除所の調査における、斑点米カメムシ類および果樹カメムシ類の発生状況について取りまとめました。
斑点米カメムシ類(イネカメムシ、クモヘリカメムシ、アカスジカスミカメ等)
●概況
斑点米カメムシ類の成虫は、水稲の出穂前は水田畦畔や周辺のイネ科雑草地に生息しています。水稲の出穂とともに水田内に侵入し、穂を加害しながら葉や穂に産卵します。孵化した幼虫も同様に収穫期まで穂を加害します。
●本年の発生経過
①「コシヒカリ」等の中生品種を中心とした水稲巡回調査圃場57地点において、斑点米カメムシ類のすくい取り調査を行った結果、虫数、発生地点率ともに平年を上回る値で推移しました(図1)。
(平年:平成26年~令和5年の平均)
②発生地点率が最も高かった8月下旬調査でみると、すくい取り虫数、発生地点率ではイネカメムシ(写真1)が最も多く、虫数(本年値0.96頭、平年値0.44頭)は平年より多く、発生地点率(本年値32%、平年値20%)は平年よりやや高くなりました。クモヘリカメムシ(写真2)は虫数(本年値0.63頭、平年値1.26頭)、発生地点率(本年値26%、平年値31%)ともに平年並の発生でした。
③8月上旬・下旬の調査において、本年、イネカメムシの発生が多かった地域は県央、県南および県西地域でしたが、県北や鹿行地域でも確認されており、本種は県内全域で発生していました。
果樹カメムシ類(チャバネアオカメムシ、クサギカメムシ、ツヤアオカメムシ等)
●概況
本県において果樹を加害する主なカメムシ類は、チャバネアオカメムシ(写真3)、クサギカメムシ(写真4)、ツヤアオカメムシ(写真5)等です。いずれも成虫で越冬しますが、越冬場所は、虫種によって異なります。いずれもスギ、ヒノキの球果等を主要な餌としますが、カメムシ類の発生量に対して主要な餌の量が不足すると果樹園に飛来してウメ、ナシ、カキ等の果実を吸汁加害します。
●本年の発生状況
①山林でのチャバネアオカメムシの越冬数調査(調査時期:2月・42地点調査)
2月上旬頃に県内各地の樹林地から表層土を含んだ落葉を1地点当たり30L採取し、本種の越冬数を調査した結果、越冬成虫数(本年値9.7頭、平年値1.9頭)は平年より多く、越冬地点率(本年値86%、平年値40%)は平年より高い値でした。
②チャバネアオカメムシの生息密度調査(調査時期:4月下旬~5月・2地点調査)
本種がサクラに移動し果実を吸汁する時期に、サクラ果実(10結果枝)上での生息密度を調査した結果、生息密度(本年値3.5頭、平年値 4.9頭)は過去11年中3番目に高い値でした。
③予察灯での発生量調査(調査時期:4月から10月・1地点調査)
チャバネアオカメムシの越冬成虫は、平年よりやや早く4月第5半旬から誘殺されました。4~7月の総誘殺数(本年値2,401頭、平年値560頭)は平年より高い値で推移しましたが、8~10月は平年値を下回る誘殺数で推移しました(図2)。
ツヤアオカメムシの越冬成虫は4月第5半旬から誘殺され、平年より早く認められました。その後、4~7月の総誘殺数(本年値711頭、平年値48頭)は平年より高い値で、8~10月はおおむね平年並の値で推移しました(図2)。
クサギカメムシの越冬成虫は4月第6半旬から誘殺され、平年より早く認められました。4~7月の予察灯への総誘殺数(本年値156頭、平年値54頭)は平年より高い値で、8~10月はおおむね平年値を下回る値で推移しました(データ省略)。
④ナシ調査圃場での被害果調査(調査時期:5~9月・20圃場調査)
5月上旬に被害が認められ、8月下旬における被害果率(本年値0.5%、平年値0.2%)は平年より高い値でした。
病害虫発生予察情報を参考に
病害虫防除所では、カメムシ類の発生状況や防除に関する情報などを、病害虫発生予察情報で定期的に発表しています。本情報は病害虫防除所のホームページに掲載していますので、防除の参考にしてください。
ホームページでは病害虫・フェロモントラップ・農薬関連情報がご覧いただけます。