野生鳥獣による農作物被害対策は、鳥獣を「近づけない」「侵入させない」「捕獲する」の3つの対策を総合的に、地域ぐるみで行う必要があり、十分な効果を得るためには、そうした取り組みを地域で中心になって進めることができる人材の育成が重要です。
鳥獣害対策に係る人材育成の取り組み
本研修は、鳥獣害対策の3本柱である「近づけない、侵入させない、捕獲する」(過去記事「野生鳥獣による農作物被害防止対策」を参照)を基本に、「①鳥獣種ごとの生態」「②農作物を守る対策」「③地域ぐるみでの被害対策」を学べる内容としています。
特にイノシシや、近年被害金額が増加傾向にある中型獣(ハクビシン、アライグマ等)については、座学と実習を組み合わせて、より実践的な内容としています。
① 鳥獣種ごとの生態を学ぶ(座学)
農作物被害を及ぼす主な鳥獣(イノシシ、鳥類(カラス・カモ類等)、中型獣類(アライグマ・ハクビシン等))について、各鳥獣種の生態や被害対策の基礎知識を学ぶことができます。
また、近隣の県で被害が問題になっている、ニホンジカに関する内容も加える等、内容の充実を図っています。
②農作物を守るための対策を学ぶ(座学、実習)
わなや電気柵は単に設置すればよいというものではなく、各鳥獣種の特徴等を理解して、適切に設置し、維持管理していくことが大切です。本研修では、専門家による講義や実習を通じて、正しい設置方法や維持管理の方法を学ぶことにより、効果的な鳥獣害対策を実践することができます。
実習による実践的な研修
侵入防止柵を設置する際の注意点を座学で学ぶだけでなく、実習で侵入防止柵やわなの設置を経験できるようにしています。令和5年度には、中型獣に特化した研修を開催し、受講者が中型獣用電気柵を実際に設置する実習を行いました。
③ 地域ぐるみでの被害対策を学ぶ・実践する(座学、実習)
鳥獣害対策は、実際に被害を受けている農業者だけでなく、地域住民を含め集落全体で取り組むことが重要です。そのため地域ぐるみで行う鳥獣害対策のきっかけづくりとなる「集落環境診断」の手法について座学および現地研修を行っています。「集落環境診断」は、総合的な鳥獣害対策を進めることを目的として、現地の被害状況や対策について地域住民を主体とした取り組みを支援する手法です。
集落環境診断の主な流れ
集落環境診断の目的・進め方を学んだ後、実際に集落を歩きながら、鳥獣の痕跡、侵入経路、周辺の農地や森林の状況、侵入防止柵の維持管理状況を確認します。その後、確認した内容を地図上に書き込んで集落の状況を可視化し、集落の課題を整理したうえで対策を考えるワークショップを実施します。
農業者や地域住民の方も参加を
鳥獣害対策は地域の方に広く理解していただくことが重要であることから、市町村などの行政職員だけでなく、現地で被害対策に取り組んでいる農業者や地域住民の方にも広くご参加いただきたいと考えております。
農業者や地域の皆様が求める研修会を開催し、現地の状況に合った鳥獣害対策の普及を図ってまいりますので、ぜひ研修会へご参加ください。
鳥獣害対策は一部の方の努力だけで被害を抑えることはできません。研修の機会を通じて、多くの方が正しい地域や技術を学び、集落全体で鳥獣害対策に取り組みましょう。