生の野菜は水分量が90%以上あるものも多く、そのままではすぐに傷んでしまいます。乾燥させて水分を減らすことで、微生物の増殖を防ぎ、保存性を向上させることができます。乾燥野菜の工程は簡単なようですが、販売する際には他の加工品と同様、品質が良いことや安全性が求められます。そこで今回は、加工上の留意点を紹介します。
乾燥野菜を製造する流れ
乾燥野菜の大まかな製造工程は次のようになります。
原料・資材の受入れ・保管
↓
洗浄・殺菌
↓
下処理
↓
乾燥
↓
包装・検品
↓
出荷
この中で、洗浄・殺菌と乾燥の工程が注意ポイントになります。
●原料・資材の受入れ・保管
加工室に汚染の原因となるものをなるべく持ち込まないようにします。まず、原料を加工室に搬入する前に、傷んだ部分を取り除き、根菜やいも類は泥や土を落としてから、加工室専用の容器に入れ替えて搬入します。
包装用の袋などの資材も段ボールから取り出し、密閉容器に入れるなどして、清潔な場所で衛生的に保管しましょう。
●洗浄・殺菌
洗浄工程では、原料をしっかりと丁寧に洗浄して異物や微生物を除去します。最終製品を加熱せずそのまま食べる場合には、次亜塩素酸ナトリウムなどでの殺菌が必要です。
次亜塩素酸ナトリウムでの殺菌方法は以下の通りです。
①「食品添加物」と表示のある次亜塩素酸ナトリウムを水で希釈し、原料に対して十分な量の殺菌液を作ります。(濃度は200mg/ℓまたは100mg/ℓ)
6%次亜塩素酸ナトリウムを使用する場合であれば次表のような割合で希釈します。
次亜塩素酸ナトリウム濃度 | 6%次亜塩素酸ナトリウム | 水 |
---|---|---|
200mg/ℓ | 10mℓ | 3ℓ |
100mg/ℓ | 5mℓ | 3ℓ |
②洗浄した原料の水気を切り、殺菌液に浸漬します。200mg/ℓの濃度の場合は5分間、100mg/ℓの場合は10分間をタイマーで計ります。この時、材料が液から出てしまうと殺菌の効果が薄れてしまいますので、原料が浮かないように落し蓋のようなものをのせるとよいでしょう。
③浸漬後は、成分が残らないように流水で十分に洗浄します。
せっかく殺菌してもその後、不衛生な取扱いをしたのでは、微生物で再汚染することになりかねません。殺菌後はすべての工程で清潔な手袋を着用し、使用する器具類などにも随時アルコールを噴霧することで2次汚染を防ぎます。
●下処理
乾燥状態を均一にするために、材料をカットするところから注意が必要です。厚みが不均一だと乾燥にムラができ、水分が多く残っている部分からかびが発生することがあります。カット作業前後には包丁や機械類に欠けや異常がないことを確認し、硬質異物の混入をチェックします。
必要に応じて原料に適した下処理を行います。皮むきやカットした後、変色防止やアク抜きのために、水や酢水、食塩水などに浸けるものもあります。青菜などは短時間ゆでて冷水にとった後、水気を取り除いてから乾燥させると色よく仕上がります。
いも類やカボチャなどは、加熱してから乾燥させてパウダーにすれば、菓子などの生地に混合したり、お湯に溶いてソースにしたりするなど用途の幅が広がります。
●乾燥
乾燥機を使用すれば、天候に左右されず、衛生的に乾燥させることができます(写真1)。よく水気を切ったものを乾燥機のトレーに広げて乾燥させますが(写真2)、この時にスライスした材料を何枚も重ねたり、庫内に入れる量が多すぎたりしてしまうと、乾燥に時間がかかって、変色や微生物の増殖に繋がります。
乾燥する温度や時間は原料の種類やカットの形状、乾燥機の能力によっても変わってきます。厚みのある材料などの場合は、初めから高い温度で乾燥すると先に表面の水分が抜けて硬くなり、内部の水分が蒸散しにくくなってしまいます。低温から始め、徐々に温度を上げるなど、状態を確認しながら試作をし、設定温度と時間を決めましょう。
乾燥が不十分だと、保管中にも微生物が増殖する可能性があります。重量を計り、歩留りを目安にしながら目標とする仕上がりまでしっかり乾燥させます。また、乾燥後に粉砕して粉末製品にする場合には、水分含量を10%程度にする必要があります。ある程度手触りで確認することもできますが、水分量や水分活性(※1)を測定すれば確実です。
(※1)水分活性とは、食品中の水の中でも、食品の成分と結合せずに微生物が利用できる水(自由水)の割合を表す値で、最大が1.00。乾燥野菜の水分活性は0.2~0.5程度。
●包装・検品
例えば、袋に入れてテープで留める程度の簡易な包装により短期間で販売するのか、品質保持剤を封入して密封し長期間保管できるようにするのかなど、どのように包装するかによっても日持ちが変わります。品質保持剤を封入する場合には、酸素や湿気を通しづらい材質の包材を選択します。
また、製品に異物の混入がないか、包装の破れがないか、シール面に不良がないかなどをチェックします。紫外線や高温などによる影響で変質するのを避けるため、保管場所や販売時の陳列場所にも気を配る必要があります。
施設設備の衛生管理、使用水の管理、そ族・昆虫対策、食品取扱者の衛生管理、手洗い消毒管理などの一般衛生管理をしっかり行った上で、製造時の管理を行い、より良い加工品づくりを目指しましょう。
【参考文献】
「小規模な野菜乾燥粉末製造事業者におけるHACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書」