現在、日本では、農作物の生産に欠かせない化学肥料の原料のほぼ全量を海外からの輸入に頼っています。肥料の原料価格は、①世界的な作物増産による需要増加、②中国の内需優先による輸出制限、③ロシアのウクライナ侵攻による輸出停滞、④原油価格の高騰、⑤円安などの影響を受けて大きく値上がりしています。
令和5年春の肥料価格は、前年に比べて平均で約4割、代表的な化学肥料は約7割値上がりしました。秋肥価格は、やや低下しましたが肥料価格の高騰は生産者の経営に打撃をあたえており、今後、安定的な農業生産に影響をおよぼす可能性があります。
今回は、JA全農いばらきがメーカーと共同で開発した混合堆肥複合肥料「サステナミライZI」について紹介します。なお、販売は県内JAに限定しています。
新たな混合堆肥複合肥料の開発・発売
JA全農いばらきでは、高騰している肥料価格を抑え、安定した農作物の生産をめざすために、堆肥を活用した「混合堆肥複合肥料」の取扱いを拡大しています。堆肥は「価格が安い」「養分がゆっくり作物に吸収される」「微生物の働きを促進し土を柔らかくする」などのメリットがあります。一方、「散布しづらい」「成分が安定しない」「質のよいものが手に入りにくい」などのデメリットもあります。
堆肥と化学肥料を混ぜ合わせてつくられた「混合堆肥複合肥料」は、堆肥のメリットはそのままにデメリットを払拭しています。これまでも県内のJAを通じて混合堆肥複合肥料を取扱ってきましたが、昨今の肥料価格の高騰を受けて、肥料製造メーカーである朝日アグリア㈱と共同で新たな製品の開発を進め、県内産豚ぷん堆肥を使用した「サステナミライZI」を今春から発売しました。既存の化学肥料と比べて価格を約2割低減しており、生産者が利用しやすい商品となっています。
生産者・JA担当者の意見
「サステナミライZI」の発売後、実際に使用した県内の生産者からは「価格高騰により肥料の選択肢が狭まっているなかで、堆肥を使用した低コスト資材の選択肢が増えることはありがたい」「微量要素入りのため、使いやすく好印象である」などの感想をいただきました。
県内のあるJAでは、これまでも地元の堆肥を肥料原料に使用して、野菜を栽培し地元の学校給食向けに出荷していましたが、「サステナミライZI」の供給もスタートしたことで、「さらに理想的な循環型農業につながる」との意見もいただいています。JA全農いばらきでは、今後も生産者が安定的に農作物を生産し、消費者の皆さまに茨城県産の農作物が安定的に供給できるよう取り組んでいきます。