今回は、平成29年度に成果として公表した低温寡日照時でも外観(ネット)の優れた「イバラキング」を生産する技術と、現在取り組んでいるメロン研究の内容について紹介します。
外観(ネット)の優れた「イバラキング」生産のための技術
「イバラキング」(写真1)は、茨城県農業総合センター生物工学研究所が育成した県オリジナル品種です(平成22年9月品種登録)。現在、鉾田市、茨城町を中心に栽培されており、年々栽培面積が拡大しています。
優れた特性として、果実肥大性が良いこと、ネットが密で盛り上がりが良いこと、糖度が高く、爽やかな甘みで食味が良いことが挙げられます。しかし、果実の硬化期に曇雨天に遭遇すると、果実に縦ネットの大割れが発生し太いネットができやすいという問題が明らかになりました(写真2)。
園芸研究所では、平成28~30年度にかけて太いネットが発生する要因の解明と発生軽減技術の開発に取り組みました。
その結果、太いネットになる縦ネットの大割れは、日中低温で日照が少ない条件で発生が増加し、さらにトンネルを閉め切ることによって果実周辺の湿度が高くなると、発生が助長されることを明らかにしました。対策としては、曇雨天日においてもハウス内気温10℃以上を確認したうえで、日中トンネル換気を行い湿度を下げることが有効であり、秀品や優品などの上位等級の割合が増加することを明らかにしました(図)。
なお、対策技術の詳細はこちら
からご参照ください。
4:秀相当、3:優相当、2:無印、1:A品相当、0:販売不可
※開閉区は7時半(ハウス内10℃目安)から15時半まで換気
現在取り組んでいる試験研究
●省力的換気技術の開発
本県のメロン生産は簡易な単棟パイプハウスによる「無加温半促成栽培」が多く、細やかな温湿度管理を行うために側窓、内張りや、トンネルの開閉を手作業により行っています。手作業による開閉は、生産者には大きな負担となっており、規模拡大を困難にしている要因の一つとなっています。また、品質・収量の面では、生産者ごとの栽培管理方法の違い、大規模生産者ではハウスごとの微妙な管理方法の違いが、メロン品質のバラツキに反映されやすく、産地としての問題になっています。このため、過去に市販の自動換気装置の導入が試みられましたが、生産者が行う風向きや外気温、湿度等を考慮した精密な換気管理を再現することが難しく品質が低下したため、普及には至りませんでした。
そこで、メロン栽培における自動換気の実用性を探り、作業の省力化を図るため、比較的安価で、細かな制御設定が行えるUECS(ユビキタス環境制御システム)を活用した環境制御装置の活用を検討しています(写真3)。現在、「イバラキング」の栽培経験の長い篤農家のハウスをモニタリング調査し、ハウス内の環境を数値化して、環境制御装置による篤農家栽培管理技術の再現を目指しています。
●「イバラキング」の6月中下旬出荷に対応した栽培技術の開発
「イバラキング」は低温肥大性に優れる特徴から、4月下旬~5月収穫向けの品種として普及しましたが、6月以降においても多くの需要があることから、作期が6月下旬まで拡大しています。しかし、6月以降の高温期に入ると、収穫間際に株がしおれやすく、糖度や肉質が低下することがあり、その対策が要望されています。そこで、収穫期のしおれ対策として、収穫2週前からの遮光と収穫までの継続的な潅水について、しおれに対する効果と果実品質に与える影響を検討しています。同時に、単価の下がる6月出荷への対応として、増収による収益性の向上を目指して、子蔓3本仕立て6果収穫などの栽植方法についても検討を行っています。
●生物工学研究所育成新規系統の栽培評価試験
本県の作物育種を担当する生物工学研究所では、「イバラキング」に次ぐ、新たなオリジナル品種の育成を進めています。園芸研究所では、生物工学研究所が育成した新規有望系統の評価を担当し、品種として普及する見込みがあるかどうか調べるため、所内栽培試験および現地での栽培試験を行っています。
現在は、産地から6月収穫に向く耐暑性の高い赤肉メロンの要望が強いことから、新規赤肉系統「ひたち交4号」「ひたち交5号」「ひたち交6号」の現地試験を進めています。
また、令和4年度からは、台木の試験も行っており、メロンつる割病レース1,2y、1,2wに強度耐病性を有する系統の接木適性および栽培適性の評価を行っています。
なお、これまでのメロンに関する研究成果は、園芸研究所ウェブサイト
に掲載していますので、ご参照ください。。