このため、国では、平成26年に発足した農地バンクにおいて、地域内に分散・錯綜する農地を借り受け、まとまった形で担い手へ再配分し、農地の集積・集約化を実現する農地中間管理事業を行っています。
農地バンクを活用した結果、農地の大区画化が図られ、①担い手の労働時間が大幅に短縮された地区や、②新規就農モデル団地を設定し、新規就農を促進した地区、③集落の農地を一括して農地バンクに預けて担い手に集約した地区等、全国で様々な優良な事例が見られるようになっています(図1)。
農地バンクを創設して以来、担い手への農地集積は進展し、令和4年度末の担い手への全国の農地利用集積率は、前年度末に比べ0.6ポイント増の59.5%となりました(図2)。
「人・農地プラン」から「地域計画」へ
担い手への農地の集積率については、令和5年度までに8割に引き上げる目標が設定されています。このような中で、国では担い手への農地の集積・集約化を加速させる観点から、真に地域の話合いに基づく「人・農地プラン」の実質化の取組を、令和2年度から全国で集中的に推進することとしました。「人・農地プラン」の実質化に際しては、5年後から10年後の農地利用についてアンケート調査を行い、農業者の年齢、後継者の有無等を地図により見える化し、中心経営体への農地の集約化に関する将来方針を作成しました。
この「人・農地プラン」については、「農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律」の施行(令和5年4月1日)により法定化され、地域ごとに目指すべき将来の農地利用の姿を明確にする「地域計画」として、令和7年3月末までに市町村が策定することとなりました。
県における農地の集積・集約化に係る取組状況
県では、農地バンクの活用推進と合わせた県単独事業等の活用により、農地の集積・集約化を進めてきたところであり、県における担い手への農地集積率は、24.5%(平成26年度)から39.9%(令和4年度)に増加しました(表)。
H26 | H27 | H28 | H29 | H30 | R1 | R2 | R3 | R4 | ||
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耕地面積 ① | 172,300 | 170,900 | 169,200 | 167,500 | 166,000 | 164,600 | 163,600 | 162,300 | 160,700 | |
担い手への 集積面積 ② |
42,271 | 45,542 | 49,596 | 54,860 | 56,724 | 58,325 | 60,671 | 61,415 | 64,064 | |
うち機構 転貸面積 |
348 | 3,904 | 5,502 | 7,070 | 8,677 | 9,596 | 11,197 | 12,529 | 13,668 | |
担い手への 集積率(②/①) |
24.5% | 26.6% | 29.3% | 32.8% | 34.2% | 35.4% | 37.1% | 37.8% | 39.9% |
水田農業については、集約化に重点を置いた100ha規模の大規模水田経営体を短期間で育成することを目指す「農地集約型大規模水田経営体育成加速化事業」に県内3地区で取り組んでおり、所得向上モデルとして、他地域への波及が期待されます。
また、集積・集約化に対する潜在的ニーズが高い中、大規模経営体が今後自ら農地調整に取り組んでいけるよう、モデル地区の事業者の知見を活用するとともに、地域の話合いを円滑に進める支援などを通じて、県内各地で集積・集約化に取り組む経営体の育成を目指します。
さらに、地域の内外を問わず、意欲のある担い手等への農地集積に積極的な地域については、市町村からの申請に基づき「重点支援地区」に設定し、販売金額1億円を超える大規模経営体の育成・確保を図る「リーディングアグリプレーヤー育成・確保事業」に取り組み、規模拡大による所得向上を目指す担い手を対象とした農地の集積・集約化と生産性の向上に必要な支援を一体的に展開していきます。
その他、基盤整備事業に関連して農地中間管理事業を活用しようとする地区が多く見込まれていることから、基盤整備事業実施地区や実施予定の地区における機構集積協力金を活用した中間管理事業の推進により円滑な農地の転貸を実現し、担い手の生産性向上を目指します。
今後も、農地中間管理事業や県単独事業を活用し、農地の集積・集約化を進めることに加え、地域計画の策定支援と合わせて、地域が自立的に農地の集積・集約化を目指す取り組みを支援していきます。