このような中、県では有機農産物の生産拠点を県北地域に構築するための施策を展開していたことから、市やJA、県北農林事務所企画調整部門・土地改良部門等が連携して、市外から有機農産物生産に取り組む2法人の三美地区への参入を支援し、各種補助事業の活用により収益性の高い作物の導入や地域の活性化に努めてきました。
令和3年度には、常陸大宮市で「有機農業推進計画」が作成され、当該地区は有機農業モデル地区に位置付けられています。
ここでは、三美地区における、新たに参入した二法人とJA出資法人の活動と、農業改良普及センター等が連携して行った支援の内容等について紹介します。
有機農業に取り組む経営体への支援
●株式会社レインボーフューチャー(本社 筑西市)

【参入年度】令和元年度
【作型】露地周年栽培(ベビーリーフ、ニンジン、ホウレンソウ)
【面積】5.5ha
初年度は過去に作付けしていたそばの雑草化対策や露地栽培での害虫対策が課題となりました。そこで、太陽熱土壌消毒による抑草効果や、防虫ネットによる害虫防除効果について実証試験を行い、その結果に基づいて対策を行いました。また、県農業研究所と連携し、収量向上に向けて土壌サンプリング調査のデータに基づく土づくりを令和元年度から継続的に支援しています。
令和4年度には「グリーンな栽培体系への転換サポート事業」を活用し、ドローン空撮によって、圃場の雑草発生状況や作物の生育状況、圃場管理作業の状態をモニタリングしました。本社(筑西市)と三美農場でこれらの画像を共有することで、各圃場の的確な状況把握による適期作業の実証を行い、圃場見回り時間の80%削減を実証できました。

●株式会社カモスフィールド(本社 笠間市)

【参入年度】令和3年度
【作型】施設周年栽培(コマツナ、ホウレンソウ)
【面積】ハウス1.7ha
令和3年度にパイプハウスを整備し、翌年度から栽培を開始しました。施設葉物野菜は年間で数回収穫するため、短期間での土づくりが課題となります。そこで、県園芸研究所と連携し、土壌サンプリング調査を行い有機栽培歴の長い本社(笠間市)圃場の土壌データと比較しながら、土づくりと栽培管理の支援を行っています。また、本社のある笠間地域農業改良普及センターと連携し、農業参入等支援センターを活用した中小企業診断士による経営相談や、長期経営計画の作成を支援しました。栽培1年目の課題を踏まえ、令和5年度は現地において有機質肥料の最適施用量などの試験も行っています。
●株式会社JA常陸アグリサポート(本社 常陸大宮市)
【参入年度】令和4年度(一般栽培では、平成20年度から参入)
【作型】(有機栽培)露地栽培(ジャガイモ、サツマイモ、ニンジン、カボチャ、タマネギ等)
【面積】1.4ha
有機栽培に初めて取り組むため、いばらき有機農業研究会会長の松岡氏の指導を受けるとともに、有機栽培に適した儲かる品目の選定を支援するため、各品目の害虫発生状況や収量等を調査しました。令和5年度には販売促進の一環として有機JAS認証取得を支援しています。
さらに、令和5年度からは民間指導機関の指導を受けながら、市内鷹巣地区で3.5haの水稲有機栽培を開始しています。効率的な除草や害虫対策が課題ですが、圃場の環境に合わせた栽培方法の検討を重ねることで数年後には学校給食米飯を100%有機米とする目標を掲げています。
学校給食への食材供給
三美地区で生産されたジャガイモ、カボチャ、サツマイモ、ニンジン、コマツナ、ホウレンソウの合計6品目を学校給食に導入しました。導入にあたっては、関係機関との打合せや学校給食の需要品目・量の把握を行い、合計40tの野菜を供給することができました。
有機農業への理解促進、取組拡大
三美地区で有機農業への理解促進と技術向上のため、産地見学会と技術検討会を県北農林事務所主催で開催しました。産地見学会では有機農産物への理解促進が図られ、生産者と消費者のつながりができました。技術検討会では有機農業を実際に行っている生産者や、有機農業に関心のある生産者が多数参加し、施設園芸での土づくりや水稲有機栽培の取組を学びました。

また、市内での有機農業の取組を拡大するため、有機農業への関心が高い生産者を対象に栽培技術研修会をJA常陸アグリサポートの圃場で開催するとともに、出席者へはアンケート調査を行い、有機農業の取組、品目、面積について意向調査を行いました。令和5年度は定期的に勉強会を開催し、有機農業生産者のネットワークづくりに取り組んでいます。