土壌病害対策による安定生産への取り組み
A経営体ではトマトの周年栽培をしています(作付面積:促成長期どり+半促成+抑制、合計125a)。促成栽培では、統合型環境制御装置を活用した収量向上に取り組んでおり、その効果が期待されているところです。
しかしながら、促成長期どり栽培のハウスにおいては、数年前からネコブセンチュウによる被害により栽培期間中に萎れが発生し、トマトの樹勢が低下し、春先の収量が確保できない状況が見られるようになりました。管内の数件の生産者でも同じような状況が発生し、ネコブセンチュウの防除対策の徹底が求められました。
そこでまず、収穫後の根のネコブセンチュウの状況と、ベルマン法により土壌中のネコブセンチュウ数を確認したところ、被害が多い圃場では、2,000個体/土20g以上が確認されました。
ネコブセンチュウ数が多く、萎れ症状などが散見された圃場では、①殺センチュウ剤による防除、②自活センチュウを増やすための有機物施用(堆肥の施用もしくは緑肥のすき込み)、③定植時期の検討(従来の8月中旬定植から→9月初旬定植に遅らせる)、④台木品種の選定(耐センチュウ性の高い品種)の4つの対策を講じたところ、被害程度は抑えられつつあります。
図に示すように、ネコブセンチュウの被害の多い年は、年内から萎れ始め、年明けからの収量が確保できず、全体の収量は11.3t/10a(R2-R3)と低くなりました。しかし、①~④の対策を実施した後には、16.8t/10a(R3-R4)と回復し、総合的な対策を徹底することで、収量は回復しつつあります。
一方で、特に春先から、フザリウム株腐病が原因と思われる萎れの影響から、終盤の収量が確保できない状況にあります。こちらも、徹底した土壌病害対策と土づくりを実施することで発生を抑えていく必要があります。
ここ数年は、土壌病虫害による影響が散見され、収量の確保に苦慮している状況です。環境制御技術の導入による収量向上が普及しつつありますが、その前提として、土壌病害対策の重要性が再認識されました。
※R3-R4年からネコブセンチュウ防除対策を実施
ロックウール(RW)栽培の導入による収量向上への取り組み
B経営体は促成長期どりトマトを40a栽培しています。そのうち、20aにRWシステムと併せて統合型環境制御装置を導入し、収量向上に取り組んでいます(写真1・2)。
今回導入したRWのシステムでは、日射比例に応じた潅水が可能となっています。さらに、B経営体では、潅水量に過不足がないよう、廃液量を踏まえた潅水間隔や潅水量、日没時間を考慮した最終潅水時間などを調整し、水管理を徹底しています。
また、統合型環境制御装置を導入し、厳冬期の夜間の湿度管理の徹底や日平均気温を基本とした温度管理を実践しています。
しかし、収量を確保するには、これだけでは不十分であり、トマトの生育状況を確認しながら、環境管理を変えていく必要があります。B経営体では、週に1度の生育調査を継続的に実施し、生育に合わせて夜温や日中の温度設定を変えるなどの管理を徹底しています。
その結果、RW栽培導入後の初めての作では、20t/10aの収量が確保できました。これまでの土耕栽培では平均13t/10aだったことを考えると、大幅な増収となっています。
一方、収穫開始後しばらくしてから、黄化病により葉色が淡くなり、樹勢が低下する現象が見られました。定植後から気温が下がるまでの間、密度は高くないものの、黄化病ウイルスを媒介するコナジラミ類の発生を確認しています。黄化病が減収の要因と考えられ、さらなる収量向上のためには、コナジラミ類の徹底防除が必要です。そこで次作に向けて、破損していた天窓の防虫ネットを修繕するとともに、ハウスの入口に前室を設置するなどのコナジラミ侵入防止対策を強化しました。
B経営体では、さらなる収量向上に向けて、残りの20aにもRW栽培を導入しました。今後は、30t/10aの収量を目指し、栽培管理技術の向上に取り組んでいきます。