対策の柱は三つ
高温対策は「換気」「遮光」「冷却」の三つに大別されます。以下、それぞれのポイントを短くまとめます。
●ハウス上部からも排熱して換気
換気方法のうち、ファンなどを使用しない自然換気の効率は、換気窓の面積が大きいほど、また天窓と側窓の垂直距離が長いほど高くなります。この原則に基づいて、対策がなされるべきですが、パイプハウスは保温を主目的として作られていることもあり、県内施設では天窓および肩換気を行う窓がない事が多く、特に立ち栽培を行うトマト、ピーマンなどの作物では、側窓換気位置より高い部分で高温による不着果や焼け、株のしおれ等が多く見られます。
天窓がない施設での自然換気は換気効率が非常に悪く、今後も続くと考えられる夏季高温に対応していくためには、パイプハウスであってもハウス上部から排熱できる装置を装備するべきと考えます。
最近では、通常時は温度差換気を行い、強風時には風力換気に切り替わる製品が発売されています。強風時にはハウス内の空気を排出することで、ハウス内が減圧されて強風の被害を軽減する効果も期待できます。
循環扇を活用して、妻面から排気しているハウス(写真)もありますが、循環扇の能力がハウス規模に対して不足している施設も散見されます。性能に応じた台数の設置や風が目的地まで届くような配置が大切です(図)。
循環扇を併設する際は、ここから風が抜けることを確認する
・風が次のファンまで到達していない
・ハウス外に風が到達していない
●昼間の強日射を遮光
遮光資材は、ハウス内に展張して遮光を行うと昇温抑制効果が不十分となるため、ハウス外に展張することが効果的です。
また、遮光率が高すぎると、光合成の低下により、遮熱効果よりも作物の品質低下や減収程度が大きくなってしまうため、換気や冷却を組み合わせながら、20~30%程度の遮光率で、10~15時頃のみの遮光とするのが望ましいです。
●屋根散水で冷却
ハウス内を冷却する方法としては、水の気化熱を利用する細霧冷房やパット&ファン、ヒートポンプなどが挙げられます。
ヒートポンプの日中稼働は負荷が大きく、高コストとなるため、夜間の使用が現実的です。
また、比較的取り組みやすい対策として、ビニルハウスやガラスハウスの屋根に散水チューブ等を設置して水をかけ流す屋根散水冷却技術があります。
屋根散水の長所として、「設置が簡便であること」「導入費用が低く抑えられること」が挙げられます。一方、短所としては「水質の良い水が大量に必要であるため、地域によっては確保が難しいこと」「使用した水を排水できる環境が必要であること」「気化熱による冷却方法であるため、曇雨天日は冷却効果が期待できないこと」などが挙げられます。
詳しくは、農研機構が2020年に「屋根散水による施設内冷却技術マニュアル」を発表していますので、参考にしてください。
可能な対策を組み合わせる
紹介した方法は、いずれも単独使用での効果には限界があります。「換気」「遮光」「冷却」の優先順位で導入可能な対策を複数組み合わせるなど、効率的にハウス内気温を低下させることが必要です。