第3分科会では、株式会社ヤッカの代表取締役社長である勝俣良さんを講師に迎え、「法人経営の成功と失敗とは」「過去の失敗を踏まえたヤッカ式の経営計画、経営シミュレーション」「農業経営における人材育成」などについて講演していただきました。
安定的な経営を実現する新しい農業を
勝俣さんは大学卒業後、日本農業実践学園(茨城県水戸市)の野菜部門で栽培技術を学んだ後、学園の職員として勤務しました。その後、東京、千葉、茨城で異業種の農業参入に準備から関わり、農場長を務めました。その時の失敗経験を活かし、2013年、茨城県桜川市で「株式会社ヤッカ」を設立・就農され、「安定的な経営を実現する新しい農業」を目指し、顧客ニーズに合わせたコマツナの契約販売や若手人材の育成、就農支援などに取り組んでいます。
農場長時代の失敗
勝俣さんは、過去の農業参入において、赤字経営により撤退となった失敗は、大きく3つの要因があるといいます。
1つ目は「過剰な雇用」です。作業が多忙で終わらないから、という理由から雇用を過剰に増やした結果、人件費が経営継続における大きな負担になったといいます。
2つ目が「過剰な初期投資」です。年に1回しか使用しない堆肥散布機や大型ダンプなどを複数台所有したり、圃場面積に見合わない大型トラクターを購入したりと、過剰な初期投資が経営を圧迫しました。
そして3つ目、「土地の集積」に力を入れた結果、管理しきれない圃場が増え、刈り払い等の環境整備に労力を取られたり、無駄な作付けをし、結果的に反収が上がらず、赤字経営に繋がったと話します。
過去の失敗から学ぶ
これらの失敗から学んだ、農業経営を成功させるための勝俣さんの答えは、経営計画をしっかり立てることでした。そして綿密な収支計算を行うことです。1つの野菜を作るために、経費がいくらかかっているか、そこには人件費や農機等の減価償却費をきちんと組み込み、さらに生産管理計画も作成し、経営シミュレーションを行ったうえで栽培に着手するそうです。
また、経営計画を立てる際に、目的を明確にすることも大切だといいます。所得目標をいくらにするか、そこが定まれば、必要な作付け規模や労働力、設備投資が見えてくるとのことでした。
人材育成・仲間づくり
勝俣さんの講演は毎回、最後に質問の時間をとらずに、講演の途中でも自由に質問できるスタイルを採用しています。参加者からはさまざまな質問があり、そのたびに勝俣さんは丁寧に答えていました。
「作付面積が変わらない時期に雇用を入れた理由は?」という質問に対しては、「社員を増やしたら売上をもっと上げるのが基本的な考え方かもしれないが、人材育成も目的にしていて仲間を作ることが大事だと思う。」と話していました。また、「新規就農者と関わる際に大事にしていること」について問われると、「新規就農者から相談される話として、生活できない、助けてくださいが一番多い。いくらでものができているか、いくら使っているか、を本人に聞くようにしている。自分の経営の具体的な数字を見るとどこにお金を使っているかはっきりする」と収支計画をしっかり行うことを助言しているとのことでした。
おわりに
安定的な経営を実現することは、誰にとっても重要なテーマです。失敗の経験を活かし、経営安定を実現している勝俣さんの実践に基づいたお話は、参加者にとって非常に参考になったと思います。