知財権の取得・活用のメリット
●事業を守る
新商品の販売や新サービスを開始したときに、特許権や商標権等の知財権を取得していないと他社が容易に参入し、その結果シェアが減少したり価格競争に巻き込まれることが懸念されます。
その抑止力となるのが知財権です。これを取得しておくことにより法的な措置を講ずることができます。つまり知財権は「事業を守るため」に必要なものなのです。新商品販売や新サービスを始める前に、知財権の取得について検討するようにしましょう。
ただし、特許出願するとその内容は公開されてしまいます。他社に簡単に真似されない技術であれば特許出願せずノウハウとして秘匿化する戦略もあります(図1)。
●自社ブランドの構築、技術力のPR効果
また、特許権や商標権を取得しておくと、顧客との取引の場面において、自社ブランドの構築による信用力のアップ、技術力のPRといった効果も期待できます。
●知財権の活用形態
取得した知財権をどう活用するかは、事業戦略上重要です。
例えば、①独占的実施(市場独占、価格維持)、②ライセンス(実施料収入)、③譲渡(権利の売却)が考えられます。
6次産業化が関係する主な知財権
6次産業化が関係する主な知財権としては、①産業財産権(特許権、実用新案権、意匠権、商標権)と、②その他(著作権、営業秘密、商品等表示)があり、権利によって保護対象および保護期間が異なります(表・図2)。
区分 | 権利 | 保護対象 | 権利期間 |
---|---|---|---|
特許権 | 【発明】物、方法(物の生産方法を含む) <例>加工品、加工技術、販売方法等 |
出願から20年 | |
実用新案権 | 【考案】物品の形状、構造 <例>容器の構造等 |
出願から10年 | |
意匠権 | 【意匠】物品のデザイン <例>商品の形状や色彩、店舗の外観や内装等 |
出願から25年 | |
商標権 | 【商標】商品やサービスのマーク <例>商品名、ロゴマーク、ブランド名、店舗名等 |
登録から10年(更新可) | |
その他 | 著作権 | 創作的な表現(文芸、学術、美術、音楽等) <例>写真、イラスト、新聞・雑誌記事等 |
創作者の死後70年 |
営業秘密 (不正競争防止法) |
秘密に管理する必要あり | ||
商品等表示 (不正競争防止法) |
周知・著名商標、商品形態 | 商品形態模倣禁止は販売開始から3年 |
6次産業化を進めるにあたって留意すべき点
●第三者の権利の尊重
新商品を販売した後に、第三者から知財権の侵害で訴えられると大きなダメージを受けることになります。そうならないようにするためにも、新商品の開発段階で第三者の知財権が存在していないか調査しましょう。産業財産権については特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で調査することができます。
●営業秘密管理
企業には少なからず秘密情報が存在します。これを法的に保護するには、秘密情報の取り扱いに関する社内ルールを定めておく必要があります。従業員や退職者がライバル会社等へ不正に情報漏洩を行わないようにするためにも、社内の営業秘密管理体制を整えましょう。
また、第三者に秘密情報を開示するときは、秘密保持契約を結ぶとともに、提示する資料には秘密情報である旨の表示をしましょう。
●共同開発、製造または開発委託
第三者との共同開発や製造委託または開発委託を行う際は、知財権(デザイン開発委託の場合は著作権)の帰属・取扱いを定めた契約を結ぶようにしましょう。
それらの事前検討の段階であれば、少なくとも秘密保持契約を結んだうえで打ち合わせを行うようにしましょう。
知財権によるブランドの保護
「ブランド」とは他人の商品やサービスとの差物化を図るための「識別」であり、消費者が感じた信頼や好意的イメージと相まって顧客吸引力を発揮するものです。
モノやサービスがあふれる時代だからこそ、大事なブランドを適切に保護することが重要となります。
●ブランドを保護する知財権
ブランドを形成するものとしては、社名や屋号、商品名・サービス名、商品のパッケージデザインなどが挙げられます。
これらを保護する代表的な知財権としては商標権が挙げられます。パッケージデザインは意匠権での保護も可能ですが、本稿では商標権について以下に説明します。
●商標権
商標は、自分の取り扱う商品・サービスを他人のものと区別するために使用する文字や図形等のマークです(図3)。
商標権を持っていることにより、①自分の商標として安心して使い続けられる、②紛らわしい商標を他人が登録したり使用したりするのを防げる、といった効果が期待できます。
特許庁「商標活用ガイド」より
●商標権を取得しないリスク
大切な商標を商標権で保護しないと、例えば次のようなリスクがあります。
① 他人に商標登録され、使えなくなってしまう
商標登録は基本的に早い者勝ちです。どちらが先に使い始めたかではなく、どちらが先に商標出願したかが重要となります。店舗名や商品名の変更、パッケージやカタログの作り直し等の対応が必要になることもあります(図4)。
特許庁「商標活用ガイド」より
② 模倣品の排除が困難
評判の良い商品ほど模倣品が出回りやすいと言えます。模倣品の品質が悪い場合は、自社商品の品質が悪いと勘違いされたり、苦情対応が必要になることもあります。
商標権を持っていないと販売停止を求めることもできず対応に苦慮することになります(図5)。
特許庁「商標活用ガイド」より
③ 取引してもらえない
自社商品を百貨店やECサイトで扱ってほしい場合、商品に付いている商標を商標登録していないと、十分な信用が得られず扱ってもらえないことがあります(図6)。
特許庁「商標活用ガイド」より
●商標権を取得するための手続
商標権は、特許庁へ出願して商標登録することにより取得できます。その手続を以下に簡単に説明します。詳細はINPIT知財総合支援窓口へお問い合わせください。
① 事前調査
出願前や使用前に、他人の商標が出願・登録されていないか調査しましょう。他人の商標(類似を含む)がある場合は、自分が登録できないだけでなく、無断で使用すると商標権の侵害となる可能性があります。商標も前出の特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で調査することができます。
② 登録要件の検討
商標法では「登録できない商標」が定められています。それに該当しないことの確認が必要です。
③ 出願手続
所定の様式の願書に必要事項を記入して特許庁へ出願します。願書のひな型や作成要領は、特許庁やINPITのwebサイトからも入手できます。
④ 商標登録
特許庁の審査をパスし、登録料を納付すると商標登録されます。商標権の存続期間は登録日から10年ですが、更新登録により存続期間を更新することが可能です。
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