被害防止対策の3本柱
野生鳥獣による農作物被害防止対策では、大事な取組みとして、鳥獣を「①近づけない」「②侵入させない」「③捕獲する」の3つがあります(図1)。
これら3つの対策を地域が一体となって取り組むことが効果的であることから、必要となる対策を確認するため、住民参加による集落環境診断を実施することが有用です。
①近づけない対策
野生鳥獣による被害では、エサとなる誘引物(放任果樹・収穫残渣)や、農地に近づきやすい隠れ場があると、被害を引き起こす要因になると言われています。これらの要因について、農地の周辺や集落全体を確認し、野生鳥獣が近づきにくい環境を作ることが重要です。
【対策】
・放任果樹(収穫しない果樹)を伐採
・収穫後の残渣や未収穫物は速やかにすき込むなど、適正な処分
・隠れ場になりやすい耕作放棄地や薮の適正な管理
②侵入させない対策
侵入防止柵による対策では、後述の野生鳥獣からの被害を防ぐ仕組みを正しく理解して設置することと、持続的な維持管理を設置前から考えておくことが重要です。侵入防止柵は設置して終わりではなく、定期的な草刈りや補修、見回り等の維持管理により、侵入防止効果を保っていく必要があります。
●電気柵
野生鳥獣が電線に触れると電気が流れ、痛みを感じるため、柵に近寄りにくくなります。各獣種の対策に適した電線の高さがあるため、対象獣種を見極めて設置することが重要です(図2)。
【対策のポイント】
・電気は24時間通電
・電圧が正常(5000V以上)かどうか定期的に確認
・地形に合わせて電線を設置(斜面の直下や窪んだ地形では注意が必要です)
※正しい設置方法を守りましょう
電気柵を家庭用電源に直接つないで設置することは、人や家畜を死傷させる可能性があり、大変危険ですので、絶対にやめてください。
●ワイヤーメッシュ柵
強度のある金属製の鋼線等を格子状に溶接したパネルで、これを設置することにより、野生鳥獣による侵入を物理的に防ぐものです。
【対策のポイント】
・地際部は10㎝程を埋めて、アンカー等で固定(地際補強材等で掘り返し防止)
・柵を固定する支柱は、圃場側に設置(外側から柵を倒されにくくなります)
・ワイヤーメッシュ柵と地際、ワイヤーメッシュ柵間の接続ですき間がないように設置(斜面や地表が柔らかい箇所は特に注意が必要です)
③捕獲する対策
農作物被害を減少させるためには、農作物を加害する個体を捕獲する必要があります(写真1)。
農作物の味を知った個体は、毎年同じような時期・場所で加害する機会を狙っています。
なお、捕獲には銃やわな等を用いるため、狩猟免許や捕獲許可が必要になります。
捕獲でわなを用いる場合には見回りを毎日行い、捕獲が確認された場合には速やかに処置し、錯誤捕獲(他の鳥獣が間違って捕獲されること)の場合には速やかに放獣しましょう。
県主催の野生鳥獣による農作物被害対策研修
野生鳥獣による農作物被害の防止のため、地域で行われる被害対策の取組に対して的確な指導・助言等を行う人材の確保・育成が必要となっています。
そこで県では、茨城県内の市町村職員や集落の代表者、農業者等を対象とし、鳥獣被害対策に関する専門的な知識や技術の取得を目的とした研修会を開催しています。
研修会は、イノシシや中型獣(ハクビシン、アライグマ等)の生態および対策を学ぶものや、侵入防止柵の設置方法、現地での集落環境診断手法を学ぶといった内容で実施しています(写真2)。
地域全体で対策を講じ、被害を減らそう
野生鳥獣による農作物被害を防ぐには、3つの被害防止対策を総合的に取り組むことが重要です。個人の対策に加えて、地域全体で対策を講じることで被害をより抑えることができます。研修等で正しい知識や被害対策の技術を学び、野生鳥獣による農作物被害を減らす対策を実践しましょう。
今年度も野生鳥獣による農作物被害対策研修会を開催いたします!興味のある方は、ぜひご参加ください。
内容は決定次第、下記HPにて随時お知らせいたします。
お問い合わせ先
●野生鳥獣による農作物被害対策について
茨城県農林水産部 農地局 農村計画課 農村活性化G
電話029-301-4264