茨城県における直近の花きの産出額は163億円(令和4年:農林水産省・生産農業所得統計)で全国第6位に位置しています。様々な品目が県内各地で栽培されており、特に小ギク、グラジオラス、フリージア、切枝類、芝は、全国でも有数の産地となっています。
一方で、花き生産をめぐる環境は、近年、社会情勢の変化に伴う消費者ニーズや流通形態の多様化や輸入農作物の増加による国内外の産地間競争の激化が見られ、厳しい状況となっています。さらには、燃料価格高騰をはじめとした物価上昇の影響により、資材費等の生産コストの増加が著しく、生産者の負担となっています。
このような中、県では生産者および「いばらきの花振興協議会」等と連携して栽培技術や品質の向上に努めるとともに、花き文化の振興や消費拡大に向けたイベントなどを実施することで、県内の花き生産振興に取り組んでいます。今回は、その内容を紹介します。
若い世代にも花への関心を高めたい
「いばらきの花振興協議会」は、生産者や花き関係団体が構成員となっており、国の補助事業である「ジャパンフラワー強化プロジェクト推進」事業を活用して、栽培技術や品質向上に係る実証試験、花き文化の振興、消費拡大に向けた取組を実施しています。
これまでに、栽培技術や品質向上に係る取り組みとして、LED電照による生産性・品質向上試験や栽培省力化に係る実証試験のほか、流通の効率化に向けた集出荷システムの構築等を実施してきました。今後も産地からの課題解決に向けた要望を受け、栽培技術や品質向上に係る取組を支援していきます。
花き文化の振興および消費拡大に向けた取組については、「全国高校生花いけバトル茨城大会」を開催し、若い世代の花きに対する関心を高め、花きの消費拡大を図っています。「高校生花いけバトル」とは、高校生が2人1組でチームを作り、5分間で花を生け、その所作や作品の美しさ等を競う、日本の花文化を現代風にアレンジした競技です(写真1・2)。いばらきの花振興協議会では、令和2年度から本大会を開催し、今年で5回目となりました。今年は昨年を上回る11校31チームが出場し、年々盛り上がりを見せています。また、本大会の優勝校は全国大会に出場する切符を手にします。茨城大会では、県産の枝物を中心とした花きが使用され、県産花きをPRする絶好の機会となっています。
その他に、県内商業施設などにおいて、フラワーアレンジメント教室や県産花きを使用した展示を行うなど、花きの消費拡大に向けて取り組んでいます。
いばらきの枝物トップランナー産地拡大事業
本県は枝物の産出額が全国第1位(図1)を誇る産地であり、県北地域ではハナモモ、鹿行地域ではセンリョウ・ワカマツ、県南地域ではヤナギ類を中心に生産されています。枝物は、インテリア需要の高まりなどにより国内外を問わず需要が高まっています。この状況を踏まえ県では、荒廃農地の再生等による生産面積の拡大や省力化機械導入に取り組む事業として、令和6年度から本事業を創出しました。規模拡大意向があり、枝物生産を希望する生産者を支援していくことで、全国一のトップランナー産地としての絶対的な地位の確立を目指していきます。
「令和4年生産農業所得統計」より
生産者団体と連携した県産花きPR
県内の花き生産者が組織する「茨城県花き園芸協会」と連携し、県内の商業施設等で「茨城県花の展覧会」を開催しています。農林水産大臣賞をはじめとした受賞者を決める審査を行うことで、栽培技術や品質向上に向けて相互研鑽を図るとともに県内産花きをPRしています(写真3)。また、関東東海地域12都県で開催する「関東東海花の展覧会」へ出品することで、県産花きの魅力を首都圏においてPR しています。令和6年1月に実施した「第72回関東東海花の展覧会」では、茨城県が当番県として特別展示を行いました。県産の枝物を使用して、観光名所である「袋田の滝」を再現する展示や(写真4)、県内各産地を紹介するコーナーを設置しました。期間中約2万人の方にご来場いただき、首都圏を中心に県産花きをPRすることができました。
(令和6年5月 イオンモール土浦)
今後の取り組み
県では今後も引き続き、生産者をはじめ、関係団体と連携し、花きの生産拡大や生産術向上のための実証試験と合わせて、花き文化の振興、消費拡大に向けた取組も実施してまいります。