収穫適期は、果実の表面色の変化で判断できることから、「恵水」用カラーチャート(表面色)が作成され、収穫適期はカラーチャート値3~4とされてきました。しかし、近年は「恵水」の収穫期も以前より高温傾向となり、果肉が軟化して食味が悪化する事例などが報告されています。
そこで、「恵水」の高品質果実を安定して出荷するための収穫条件や、適期収穫方法を再検討しました。
目指すべき果実重
開花満開後100日以降の果実について、果実重と糖度との関係を調査したところ、果実重400g以上で糖度12%以上、果実重500g以上で糖度13%以上となりました(図1)。一方、果実重500g以上では、果実重の増加に対して糖度の上昇が緩やかでした。過去の着果量の試験では、適正着果(10果/㎡)に比べて少なめの着果量(8果/㎡)とした場合、平均果実重は大きくなるものの、収量は減り、糖度の差はみられませんでした。
また過去の検討では、果実重780g以上の果実でみつ症の発生割合が高くなる傾向が認められています。よって、品質の良い「恵水」果実を生産するには、極端な大玉果ねらいではなく、樹勢に合わせた適正な着果量とし、小玉果の発生を低減する管理が重要です。満開後100日以降の果実平均横径を基準とした修正摘果基準が作成されていますので、必要に応じて修正摘果を行いましょう。
安定して高品質となる収穫適期は地色3.5以上
果実赤道部の地色(果実表面のコルクを剥がした内側の表皮)と糖度との関係を調査したところ、地色カラーチャート値2を境に、これより低い値(より青め)では糖度が低く、高い値(より赤め)では糖度は12%以上でほぼ一定となりました(図2)。地色2はまだ表皮に緑色が十分残っている状態ですので、「恵水」では比較的青めの段階から糖度が高いことが分かりました。
一方、硬度は地色3.5を境に、これより高い値では硬度はほぼ一定となりました(図3)。またヨードカリ反応の結果でも、地色3.5以上ではデンプンがほぼ抜けていました(データ省略)。よって、高品質な「恵水」果実を安定して収穫できる地色(果実赤道部)は3.5以上であると考えられました。
表面色カラーチャートを用いた適期収穫
実際の収穫における熟度の判定は、これまでと同様に「恵水」用カラーチャートを用いて行います(図4)。収穫期を前半・後半に分けて、果実赤道部の表面色と地色の関係を検討しました。その結果、収穫期前半に安定して地色3.5以上となる表面色の値は3でした(図5)。一方、収穫期後半は表面色が同じ値でも地色の値が高く、地色3.5以上となるのは表面色2.5でした。よって、高品質な「恵水」果実を収穫するには、収穫始期では表面色3、収穫盛期(収穫始期から約10~14日)以降では表面色2.5を基準として採り遅れないようにすることが重要であると考えられました。なお、実際に収穫を始める際には試食をし、食味に問題がないことを確認してから収穫を始めてください。
注1 収穫期前半は満開後129~137日、収穫期後半は満開後146~153日に収穫した
注2 箱ひげ図中の垂線(ひげ)は地色の値の最小値から最大値までの範囲、長方形(箱)に全体の50%(25~75%)の値が含まれること、長方形の内側の横線は中央値を示す
以上をまとめると、「恵水」の高品質果実の安定出荷においては、修正摘果基準等を参考にしながら小玉果の発生を低減する管理を行い、収穫時期(始期と盛期以降)によって収穫時の表面色カラーチャート値が異なることに注意することが必要です。
適期収穫を心がけ、高品質な「恵水」果実の生産・販売に向けて皆で取り組んでまいりましょう。