しかし、家畜ふん堆肥は、畜種や製造工程ごとに作物が利用できる肥料成分(肥効率)が異なるため、それを考慮する必要があります。
今回は、「茨城たい肥ナビ!」を活用した作物ごとの簡単な施肥設計について紹介します。
作物ごとの最適な施肥量を算出
「茨城たい肥ナビ!(以下 堆肥ナビ・図1)」は、家畜ふん堆肥の肥効率を考慮した作物ごとの最適な施肥量(家畜ふん堆肥および化学肥料)を、スマホやタブレット等で簡単に算出できるソフトです。
平成21年に茨城県畜産センターで開発・公開され、令和6年、肥料高騰対策や堆肥の広域流通に必要なツールとして、生産者と指導関係者にとって利便性の高いソフトにリニューアルいたしました。
環境負荷の低減や化学肥料コストの削減
家畜ふん堆肥中の肥料成分を考慮した施肥設計を行い、適正な堆肥施用量を計算すると、過剰な施肥量を減らせるので、環境負荷の低減や化学肥料コストを削減することができます。堆肥ナビでは様々な条件下で施肥設計ができるよう対応しています(図2)。
・茨城県栽培基準に準拠した露地栽培・水稲に合わせた施肥設計(50種類以上の作物に対応)
・たい肥ナビのトップ画面では茨城県内堆肥生産者リスト(R6.2月現在264名)を掲載しており、堆肥生産場所、生産者名・連絡先、成分等情報の取得
・堆肥生産者リストに掲載される堆肥は、成分入力は不要で自動設計
・自身で調製した(リストに掲載されていない)オリジナル堆肥の施肥設計
※堆肥の肥料成分値(窒素・リン・カリウム)は各自で準備願います
・屋外でスマートフォンによる操作や施肥結果のメール送付 等
「茨城たい肥ナビ!」の使い方
たい肥ナビを使用するには、茨城県畜産協会のホームページ上部の「堆肥流通コーナー」から専用ページに進んでください。
使用方法は以下の3ステップとなります。
① 作物を選ぶ
自分が施肥設計したい栽培作物・作型を選択します。栽培作物の情報がない場合、慣行施肥量を入力することもできます。
② 堆肥を選ぶ
自分が使用したい家畜ふん堆肥の情報を選択します。
畜種を選択後「①堆肥生産者リストから選択する」「②平均値を使う」「③堆肥成分値を手入力する」の中からいずれかを選択できます。③はオリジナルの堆肥を使用する時に選択してください。
③ 施肥設計結果
これまでの選択情報と施肥設計結果が表示され、家畜ふん堆肥と化学肥料の施用量が算出されます(図3)。なお、肥料代替率は窒素の基肥の50%代替、リン酸・カリは総施肥量(基肥+追肥)の100%代替を上限としています。また、気象や土壌条件等により肥効率が変化することもありますので、堆肥の施肥を行う際は、土壌診断の実施や作物の生育状況を観察し、状況に応じて施肥量を加減してください。
県内の堆肥を使って環境にやさしい農業を
今後も肥料価格の高騰が継続することが予想される中、国内ではみどりの食料システム戦略に基づく化学肥料の低減や有機農業が推進されており、これまで以上に環境負荷のかからない取り組みが求められています。「茨城たい肥ナビ!」による施肥設計は、有機資源の有効利用の一助となりますので、ぜひご活用ください。
また、(公社)茨城県畜産協会や県内農林事務所では堆肥のマッチング支援のほか、堆肥の製造方法や施肥指導等も行っていますので、お気軽にご相談ください。