ここでは、毎年各農業改良普及センターが行っている水稲定点調査(県内33地点)の結果から「コシヒカリ」の令和4年産の作柄を振り返るとともに、令和5年産に向けた対策について考えます。
種類・品種 | H22 | H29 | H30 | R元 | R2 | R3 | R4 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
水稲うるち玄米 | 76.2 | 93.0 | 87.0 | 80.9 | 81.6 | 83.0 | 67.4 |
コシヒカリ | 80.9 | 93.6 | 89.1 | 82.8 | 80.8 | 82.1 | 59.3 |
注)農林水産省「米の農産物検査結果」を参照した(R4は令和4年12月31日現在の速報値)
生育経過
令和4年の5月~7月の気象は、6月上~中旬に一時的に低温・寡照となる時期があったものの、生育期間を通して、おおむね平年並~平年を上回る気温となりました。また、県内の多くの地点で、「コシヒカリ」の登熟期にあたる7月下旬~8月中旬の間に、高温日が続きました。一方、8月下旬以降は一転して曇天や雨の日が続き、低温・寡照となりました。
図に定点圃場における「コシヒカリ」の生育経過(平均値)を示します。草丈は平年並、茎数は6月下旬までは平年より少なく推移し、その後は平年並、葉色は生育初期に平年よりやや淡く推移しましたがその後回復し、最終的に、稈長、穂長、穂数は平年並となりました(図・表2)。出穂期は早植えで平年より1日早く、適期植えで平年並となり、成熟期は早植えで平年より2日早く、適期植えで1日遅くなりました。
移植時期 | 出穂期 (月/日) |
成熟期 (月/日) |
稈長 (cm) |
穂長 (cm) |
穂数 (本/㎡) |
一穂 籾数 (粒) |
㎡当たり 籾数 (100粒) |
登熟 歩合 (%) |
千粒重 (g) |
収量 (kg/a) |
同左 平年比 (%) |
倒伏程度 (1-5) |
|
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
県平均 | R4 | 7/28 | 9/4 | 92.9 | 18.9 | 394 | 81.7 | 322 | 78.0 | 21.5 | 55.4 | 105 | 1.0 |
平年値 | 7/28 | 9/5 | 92.0 | 18.8 | 388 | 80.0 | 310 | 74.5 | 21.0 | 52.8 | (100) | 1.5 | |
早植え (5/4以前) |
R4 | 7/25 | 8/31 | 92.8 | 18.6 | 412 | 80.7 | 332 | 77.3 | 21.4 | 56.2 | 105 | 0.8 |
平年値 | 7/26 | 9/2 | 92.8 | 18.8 | 402 | 80.4 | 323 | 74.8 | 20.7 | 53.4 | (100) | 1.4 | |
適期植え (5/5~20) |
R4 | 7/31 | 9/9 | 93.1 | 19.3 | 370 | 83.1 | 308 | 78.9 | 21.6 | 54.4 | 104 | 1.1 |
平年値 | 7/31 | 9/8 | 91.1 | 18.9 | 375 | 79.7 | 299 | 74.2 | 21.3 | 52.3 | (100) | 1.6 |
注)坪刈りによる調査。平年値は過去5年間(平成29年~令和3年)の平均値
登熟歩合は1.85mm以上の粒数割合
収量と品質
令和4年産の定点圃場における「コシヒカリ」の収量は、千粒重がやや重く、㎡当たり籾数も多い傾向となったことから、平年と比べて、県平均で105%、早植え105%、適期植え104%と比較的良好となりました(表2)。一方、玄米品質は、平年と比べて全般的に乳白粒や背白粒などの白未熟粒(写真1)が多くみられ、整粒歩合が低下しました。移植時期別に見ると、5月4日以前の早植えは5月5日以降の適期植えと比較して、乳白粒、基部未熟粒、腹白未熟粒の合計値がわずかに増加しています(表3)。白未熟粒は出穂後20日間の平均気温と関係があり、出穂後20日間の平均気温がおおむね27℃を超えると白未熟粒が顕著に増加すると言われています。令和4年の出穂後20日間の平均気温は県平均で27℃を超えており、5月5日以降の適期植えと比較して、5月4日以前の早植えで平均気温が高くなっています(表3)。
移植時期 | 出穂期 | 出穂後20日間の 平均気温(℃) |
白未熟粒 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
(合計) (%) |
乳白粒 (%) |
基部未熟粒 (%) |
腹白未熟粒 (%) |
|||
県平均 | 7/28 | 27.6 | 16.0 | 7.4 | 7.5 | 1.1 |
早植え (5/4以前) |
7/25 | 27.6 | 17.6 | 8.1 | 8.3 | 1.1 |
適期植え (5/5~20) |
7/31 | 27.1 | 13.7 | 6.3 | 6.3 | 1.1 |
注1)玄米品質分析はRGQI90Aによる白未熟粒(合計)は、乳白粒、基部未熟粒、腹白未熟粒の合計とした
注2)出穂後20日の平均気温(℃)は、常陸大宮、水戸、鹿嶋、古河、龍ケ崎の 5地点の気象台データの平均値とした
令和5年産に向けた対策
近年、水稲の生育期間中に、高温や低温・寡照など極端な天候に見舞われるリスクが高まっています。特に本年産は、「コシヒカリ」の登熟期間にあたる7月下旬~8月中旬の気温が平年よりも高くなり、県南・県西地域を中心に白未熟粒の発生を助長しました。特に夏季の高温に対する対策としては、「土づくり」「適期田植え」「中干しによる茎数制御」「適切な水管理」「適期収穫と適正乾燥」「病害虫の適期防除」等の基本技術の励行が有効です。令和5年産に向けた対策としては、引き続き、基本技術の励行に努めるとともに、今後も夏季の高温による白未熟粒の発生が懸念される地域においては、「ふくまるSL」や「にじのきらめき」等、高温に強い品種の作付けを検討してください。