2023年6月14日
第50回全国豆類経営改善共励会で農林水産省農産局長賞を受賞! ~湿害回避とスマート農業技術導入によるダイズ省力・高品質栽培~ 筑西市 渡辺和弘さん・美幸さん
県西農林事務所経営・普及部門「第50回(2021年度)全国豆類経営改善共励会」の「大豆:家族経営の部」において、茨城県筑西市の渡辺和弘さん、美幸さん夫妻が「農林水産省農産局長賞」を受賞しました。湿害を回避するための栽培技術の実践、様々なスマート農業技術を導入した省力化や、無人ヘリコプターを活用した地域農業への貢献、YouTubeへの作業動画公開といった、特色ある取組が高く評価されました。
豆類の生産拡大を目的に先進的で模範となる組織を表彰
全国豆類経営改善共励会(主催=JA全中、JA新聞連、後援=農林水産省、JA全農、(公財)日本豆類協会)は、昭和47年から開催され、令和3年度で第50回を数えます。豆類のさらなる生産拡大を目的に、先進的で全国の模範となる豆類生産経営体および生産集団を表彰するもので、全国から多数の応募があり、道県審査、ブロック審査を経て、全国審査で各賞が決定されます。農林水産省農産局長賞は、最高位の農林水産大臣賞に次ぐ賞です。
湿害回避を最優先して前作の水稲作から工夫
ダイズ栽培では、籾殻牛ふん堆肥800kg/10aや土壌改良資材(石灰資材等)を施用して土づくりに努めています。
そして何よりも湿害回避を最重要ポイントと位置付け、全圃場で額縁明渠を施工し、圃場状態に応じてサブソイラで補助暗渠を施工しています。さらに、前作の水稲作では、強めの中干しや早めの落水などを行うとともに、麦・ダイズ作付け直前の耕うんはスタブルカルチを用いてより粗い土塊にすることで、圃場の透水性を確保し降雨による湿害発生を軽減させています。また、安価な小型空撮用ドローンを導入し、圃場の乾きやすさを上空から把握し、湿害回避の一助として活用しています。
低コスト化については、トラクター・田植機・ハイクリブーム等の農機に自動操舵システムを導入しています。作業精度・作業効率を向上させたことで、肥料や種子の使用量を約8%程度節減しています。
また、圃場の管理については、圃場管理システムを導入しリアルタイムで把握できるようにしています。さらに、早くから無人ヘリコプターによる防除の請負業を経営に取り入れ、茨城県農薬適正使用アドバイザーの認定も取得し、ドリフト等に細心の注意を払った作業請負や防除作業を心がけています。
自動操舵システムなどスマート農機の活用
自動操舵システムの導入により(写真)、慣行の各作業と比較して、平均で1割、最大で2割程度作業時間の削減を可能とすることで、水稲・麦・ダイズの計55haの機械作業を1人でこなしています。ただ真っすぐ進むだけでなく、軌道が重複しないこと、防除作業では作物を踏むことがないこと、さらにはこれらに気を配ることによる疲労が少ないことなどに、大きな有利性を見出しています。
地域では、圃場整備による大区画化に伴い、集落を越えた土地改良区全体でのブロックローテーション(水稲-水稲-麦・ダイズの3年4作)を実施しており、ダイズ作での連作障害回避や雑草防除に役立っています。渡辺さんは、無人ヘリコプターのオペレーターとして地域の共同防除を担い、地域農業にも大きく貢献しています。
近年では、作業をYouTubeで動画配信することで、他県など地域を超えた農業者同士で、湿害回避のノウハウや、導入した自動操舵システム等のスマート農機の実際の使用感といった情報を交換するなど、交流の和を広げています。それぞれの地域でのスマート農機導入のキッカケになる等、互いに地域農業への貢献を促す好循環が生まれています。
『楽しい農業』をモットーに
渡辺さんの今後の抱負は、「水系ごとに導入した水位センサーを使用して、パートナーである妻が担当している水管理の省力化も図っていきたい。」とのこと。また、「これからも、パートナーとともに余裕の持てる経営と暮らしを目指して、ダイズ生産に真摯に向き合っていこうと思います。」と、モットーにしている『楽しい農業』を夫妻で共有している様子が印象的でした。