第66回 茨城県稲作共進会最優秀賞
代表取締役 浅野純一 氏
水稲品種(コシヒカリ、ふくまるSL、とよめき)
水稲中心の大規模普通作経営体
受賞対象となった経営体の前身は、昭和63年(1988年)に、真木(まぎ)地区内の農作業を受託し、水稲・麦栽培を担う営農組合として、任意組合「真木営農組合」として設立されました。その後、経営規模の拡大が進んだことから、平成18年(2006年)に法人化し、「(有)真木みらいファーム」となりました。
現在、地権者の要望に応え、苗販売から農作業の部分受託、全作業受託を担っており、地域の水田の維持・保全に努めています。地域の方からの信頼は厚く、水稲面積が100haを超えた現在も農地の集積が進み、受託面積は年々増加しています。近年は農地が広域化してきたことから、作業効率を高めるために、地権者や地域の担い手との話し合いにより農地の交換を進め、集約化に努めています。経営耕作面積と各品目の作付面積は表1・2のとおりです。
基幹労働力は、常時雇用の8名で、繁忙期には臨時雇用により人員の不足を補っています(表3)。経営規模の拡大に合わせて、機械・施設の整備などを順次進めています。
販路は、米と麦は地元JAへ出荷し、ダイズとアズキは関西の業者との契約栽培となっています。
水田 | 畑 | 合計 |
---|---|---|
135 | 10 | 145(その他、農作業受託20ha) |
水稲 | 小麦 | ダイズ | アズキ | |
---|---|---|---|---|
主食用 (コシヒカリ、ふくまるSL) |
飼料用 (とよめき) |
さとのそら | 丹波大黒 | 大納言 |
99 | 36 | 7 | 3 | 1 |
男 | 女 | 合計 |
---|---|---|
6 | 2 | 8(常時雇用) |
水稲栽培の特徴
●省力・低コスト化への取組
時期別労働日数の平準化と効率的な作業を行うため、水稲では早生品種の「ふくまるSL」から中生の「コシヒカリ」さらに熟期の遅い「とよめき」と、熟期の異なる品種をバランスよく作付けしています。田植えには、GPS付田植え機を使用し、基肥施用(側条施肥)と除草剤散布作業を同時に行っています(表4)。
移植後は、従業員1人1人に担当地域を割り当て、それぞれの地域の圃場の状態や生育を観察しながら、水管理や除草剤散布などの管理作業を適期に行っています。この担当地域制では、2年サイクルで担当地域を交代させることにより、社員が様々な圃場の条件を把握し、農場全体について情報共有できるようにしています。追肥や中・後期除草剤の散布、カメムシ防除には、会社が所有する無人ヘリを利用することで、適期の作業を実現しています。
この結果、大規模経営体であるにもかかわらず、経営全体で565kg/10aの高収量を達成しています(表5)。特に早生品種の「ふくまるSL」では、品種特性に合った栽培管理により、681kg/10aと極めて高い収量となっています。
項目 | 内容 | |
---|---|---|
省力化・低コスト化 | 安心・安全対策 | |
育苗 | ●作期の分散(早生・中生・晩生) ●平置育苗 |
●種子更新率100% |
圃場整備 | ●レーザーレベラーによる整地 ●農地中間管理機構を活用した農地の集積 |
●鶏ふんペレットの施用(ふくまるSL・とよめき) ●菜の花のすき込み(特別栽培米) |
施肥 | ●側条施肥 ●無人ヘリによる追肥(R4飼料用米実証圃) |
●減化学肥料栽培(特別栽培米) |
植付 | ●GPS付田植え機の導入(8条) | – |
雑草防除 | ●除草剤の田植同時散布 ●無人ヘリ散布(中後期剤) |
– |
病害虫防除 | ●箱施用剤の田植同時散布(縞葉枯病など) ●無人ヘリ防除(カメムシ) |
●減農薬栽培(特別栽培米) |
乾燥・調製 | ●一部、カントリーエレベーターの利用 ●遠赤外線汎用乾燥機の導入 |
●グレーダー1.9mmで調整(特別栽培米) ●色彩選別機による選別 |
その他 | ●農地の集約化 | – |
品種名 | 作付面積 (a) |
袋数 (袋) |
総収量 (kg) |
10a当たり収量 (kg/10a) |
---|---|---|---|---|
コシヒカリ | 6,724 | 10,435 | 313,050 | 466 |
ふくまるSL | 3,176 | 7,213 | 216,390 | 681 |
とよめき(飼料用) | 3,610 | 7,800 | 234,000 | 648 |
合計 | 13,510 | 25,448 | 763,440 | 565 |
●高品質良食味生産への取組
無人ヘリ(自社で所有)によるカメムシの適期防除に心がけ、色彩選別機による選別を徹底し、近年の温暖化により高温障害が発生しやすい条件であるにもかかわらず、食用米の農産物検査については、全量1等を実現しています(表6)。
また、コシヒカリの一部は、つくばみらい市の「市の花」である菜の花を緑肥として水田にすき込み、地域の担い手2経営体とともに、特別栽培米「菜々ちゃん米」として生産・販売しています。
総収量(A) | 受検数量(B) | 受検比率(B/A) | 1等比率(受検内比率) |
---|---|---|---|
17,648袋 | 17,648袋 | 100% | 100% |
水田135haの大規模普通作経営として、中間管理事業を活用した農地の集積・集約化や品種による作期分散、圃場担当制によるきめ細かな管理、GPS付き田植え機や無人ヘリを使った適期・的確な作業により、水稲の高収量と全量1等を実現していることが、経営体の優れた特徴であると言えます。(有)真木みらいファ―ムは、今後も、地域の重要な担い手として発展を続けていくことでしょう。
第33回茨城県そば共進会最優秀賞受賞者
常陸秋そば
土地の条件を活かした畑作栽培
横張氏は、茨城県南部の阿見町稲敷台地において、温暖な気候と火山灰土壌という排水性の優れる条件を活かし、自作地と借地を合わせた経営耕地面積1,000aにおいて、そば、カンショ、バレイショなどの畑作物を作付しています。うちそばの栽培面積は500aと、前年(令和3年)に比較して200a増加させています(表1・2)。
農業従事者は5名で、うちそばの栽培には3名が従事しています(表3)。
そば | カンショ | バレイショ | ハクサイ等 葉茎菜類 |
合計 (延べ面積) |
---|---|---|---|---|
500 | 200 | 300 | 400 | 1,400 |
区分 | 前年比 | 令和3年 | |
---|---|---|---|
前年比 | |||
田 | – | – | – |
畑 | 500 | 167 | 300 |
合計 | 500 | 167 | 300 |
区分 | 男 | 女 | 合計 |
---|---|---|---|
農業従事者 | 3 | 2 | 5 |
うちそば栽培従事者 | 2 | 1 | 3 |
そば栽培の特徴
そば栽培圃場の一部では、プラウ耕による排水性の改善や緑肥麦のすき込みによる土づくりによる単収向上に取り組んでいます。そばの品種は、茨城県奨励品種である「常陸秋そば」を作付しており、種子更新率100%を実践して良質なそばづくりに努めています。
基肥散布は、播種同時施肥機を使用して、作業の省力化や効率化を図っています。また、作付け体系を工夫し、ジャガイモ等の露地野菜との輪作を実施し、野菜の残肥をそば栽培に活用する「効率的な施肥体系」にも取り組んでいます。
単収は、食用と種子用を合わせて117kg/10aとなっており(表4)、品質評価では、食用は全量1等、種子用は全量合格を達成しています。
品種名 | 作付面積(a) | 収穫量(kg) | 単収 (kg/10a) |
|||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
食用 | 種子用 | くず粒 | ||||||
出荷用 | 加工用 | 販売用 | 自家用 | |||||
常陸秋そば | 500 | 5,850 | 4,050 | – | 1,800 | – | – | 117 |
横張氏は、地域の農地を守るため、耕作放棄地となる可能性のある圃場を率先して借り受けながら、そばの栽培面積を拡大してきました。また、出荷したそばは品質が良く、阿見町が取り組む地域おこしの返礼品(焼酎、麺)の原料にも利用され、阿見町農業の振興、特に畑作農業の活性化に貢献しています。
令和4年からは、そばの種子生産にも取り組み始めており、将来的には種子栽培面積の拡大を図っていく計画です。また、火山灰土壌で不足しがちなリン酸を補うため、リン酸含有成分割合が高い肥料を使用することで、より良質なそば生産を目指します。
そば耕種概要
作業名 | 作業期間 | 使用機械等 | 所有 (個人・共同等) |
労働力 (人) |
作業時間 (分/10a) |
備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
排水・溝堀 | – | – | – | – | – | – |
基肥散布 | 8/20~8/28 | 播種同時施肥機 | 個人 | 1 | – | – |
耕起 | 8/1~8/9 | トラクター ロータリー耕 |
個人 | 1 | 120 | 深度:20cm |
整地 | 7/23頃 | トラクター プラウ耕 |
個人 | 1 | 40 | 深度:40㎝ 作業は圃場全体の1/3 |
播種 | 8/20~8/28 | ドリルシーダー | 個人 | 1 | 25 | 播種量:3.7kg/10a 播種様式:条播 |
防除 | – | – | – | – | – | – |
追肥 | – | – | – | – | – | – |
中耕 | 9/6~9/8 | 乗用管理機 (種子圃場のみ) |
個人 | 1 | 50 | – |
除草 | 10月 | 刈払機 | 個人 | 3 | 60 | 作業は1回 |
培土 | 9/6~9/8 | 乗用管理機 (種子圃場のみ) |
個人 | 1 | – | 中耕と同時作業 |
収穫 | 11/25~12/4 | 汎用コンバイン | 個人 | 2 | 60 | 黒化率:95% |
乾燥 | 11/25~12/4 | 乾燥機 | 共同 | 1 | 8 | 乾燥方法:熱風 |
調製・袋詰等 | 11/26~12/5 | グレーダー | 共同、個人 | 3 | 60 | – |
合計 | 428 | 7.05時間/10a |
令和5年度の共進会
令和4年度第66回茨城県稲作共進会・第33回茨城県そば共進会の上位受賞者は、どちらも地域農業を支える、なくてはならない経営体となっています。県内農業者の皆様にとっても大変参考になる、努力と工夫が散りばめられた経営内容となっております。
令和5年度の開催要綱につきましては、(公社)農林振興公社ホームページに掲載しています。今回ご紹介した受賞経営体に続く、地域の優れた経営体のご参加をお待ちしております。