弊社では、ホルモン処理作業をしなくても広い温度帯で正常に果実が肥大する単為結果品種が有効と考え、品種育成を実施してきました。
単為結果性の品種
●長ナス「PC筑陽」
以上の特性から大幅な省力化とコスト削減が実現可能な品種です。品質面でも『筑陽』と同等のボリューム感のある太長形で、濃紺でつやのある果色となります。長ナスは肉質が柔らかいため料理用途が広く、漬物加工にも適します。
適作型は6~8月播きのハウス促成栽培をはじめ、半促成栽培や夏秋栽培など、幅広い作型に適します。
●促成栽培向け長卵形タイプ「PCお竜」
高知県の促成栽培産地で長年にわたり使用されてきた「竜馬」に単為結果性を付与することを目指して育成した品種です。この品種は(日照量が少ない)ハウス栽培を前提に小葉短節間で草丈が低くコンパクトな草姿が特長です。側枝の発生は生育初期から旺盛で、安定した初期収量を確保できます。果形は長卵形で果揃いがよく高い秀品率での出荷が期待できます。肉質は柔らかく料理用途の広い品種です。
適作型は6~8月播きのハウス促成栽培を中心に、ハウス半促成栽培やハウス夏秋栽培にも適します。
●ハウス半促成用品種 「PC鶴丸」
「PC鶴丸」は、ハウス半促成栽培向けに育成された品種です。果実は、首太でボリューム感のある長卵形となり、従来品種によく見られるような曲がりなどの奇形果も少なく、高い秀品率を維持します。また、果実は濃黒紫色でつやがあり、高温期でも色ぼけ果の発生が少ないのも特長です。しっかりと詰まった果肉は輸送性や店もち性に優れます。
炒め物や煮物、焼きナスなど、幅広い用途で料理に適します。草姿は小葉ですっきりとしていて、側枝が過繁茂になることも少なく、整枝管理が比較的簡単にできます。
おすすめの最適作型は、10~12月播きのハウス半促成栽培です。小トンネルによる保温管理が容易なほか、低温期の着果性もよく初期収量を向上できます。そのほか、ハウス促成冬春栽培や夏秋栽培も可能で様々な作型に導入可能です。
単為結果性品種を栽培する時の注意点
通常の品種に比べて着果性がすぐれています。着果過多による草勢低下防止を主眼にした栽培管理が重要です。
土壌病害の回避と良品多収のため、接ぎ木栽培を原則とする。『トナシム』や『トルバム・ビガー』などの強勢台木の使用が望まれます。
定植後からしばらくは、従来品種よりも潅水回数を増やして適度な湿潤状態を保つよう心がけ、しっかりとした樹づくりを促します。
追肥は、従来品種より早めのタイミング(着果が確認できたころ)から開始し、着果負担による草勢低下を防ぎます。
夜温の低下も草勢低下を招くので注意が必要です。夜温は12~13℃以上を目安に管理します。
適期収穫が基本ですが、厳寒期のように草勢を維持しにくい期間は、Mサイズでの収穫に切り替えこまめな収穫で着果負担を防ぎます。
大幅な省力化で面積拡大を図る
単為結果ナスが普及した産地では、大幅な省力化が図れたことから栽培面積の拡大や他品目からの転換を図る事例が見られます。
タキイ種苗ではより多くの生産者が省力化の恩恵を受けられるよう、今後も単為結果品種のシリーズ化を精力的に進めてまいります。