今回は、その中で令和4年から導入したキャベツの出荷期予測シート(以下 予測シート)について紹介します。
予測シートって何だろう?
令和4年に県園芸研究所が加工・業務用キャベツの予測シートを開発しました。これは、キャベツの主要2品種(初恋、おきなSP)について定植日や面積などの必要項目を入力すると、いつ、どのくらいの量が出荷できるか瞬時に予測できるエクセルシートです。
部会では、定時定量出荷を遵守し、さらに信頼される産地を目指すために、令和4年度にこの予測シートを導入しました(図1)。
7つの項目を入力するだけ
まず、収量予測に必要な項目、①畝間、②株間、③圃場名、④面積を入力します。次に、収穫期予測に必要な項目、⑤定植日、⑥活着日数、⑦苗葉数を入力します。これらを入力すると、目標の結球部重量1.5~2.2kg/個の範囲で、100gごとに収穫可能な日付が表示されます。
さらに収量予測では、圃場の状態に応じた「収穫株率」を追加入力することで、実情に沿った圃場の見込み収穫量が表示されます(図2)。
途中補正をしてより正確に
定植前に出荷期が予測できるとはいえ、途中で天候不良によって生育が後退したり、逆に高温傾向で促進されたりします。その年次変動を反映させるために生育途中で予測の補正が必要になることもあります。その場合、予測シートでは生育中に収穫日を2回補正することが可能です。
1回目は定植後20~40日頃の「株の最大径」を計測して補正します(写真1)。この時期にノギスやメジャーを用いて、1株の葉の先端から反対側の先端まで、最も大きい値を計測します。2回目は定植後55~60日頃の「結球部直径」を計測して、補正します(写真2)。直近の、令和5年の春夏作で普及センターが途中補正を行った結果、実際の収穫日との誤差は4日以内の範囲にほぼ収まっています。
収穫前から出荷数がわかり有利販売に
部会では、生産者に対して「定植報告書」を提出するように義務づけています。この報告書には予測シートへの入力に必要な情報が記載されています。これらの情報を普及センターで予測シートへ入力し、部会員全員の圃場ごとの収穫予定日を算出します。その結果により商談担当者は収穫期前から誰が、いつ、どのくらい出荷できるのかを把握することができるため、有利販売につながっています(図3)。
事前に出荷の谷間が予測できるため、調整することができる
誰でも使え、ロスの減少にも
予測シートは、茨城県内の生産者・JA担当者・出荷組合担当者等であれば、普及センターに使用届を提出することで誰でも使用することができます。例えば、生産者自身が使用する場合にも以下のようなメリットがあります。
例① 収穫時に無理のない出荷計画にするための、定植日や定植間隔を知ることができる。
例② 出荷前の農薬の散布計画が立てやすくなる。
部会では、令和5年2月に使用希望者を募り園芸研究所の協力を得て、予測シートの使い方講座を開催しました。普及センターでは、予測シートを生産者用に一部改良しており、必要項目を入力すれば日付ごとの出荷量が表や棒グラフで瞬時に表示される分かりやすいエクセルシートになっています(図4)。
実際に令和5年春夏作で、9名の生産者が自身で出荷予測を実施し、定植日を調整できたおかげで取り遅れによるロスが減少した生産者もいました。
予測可能な品種数を増やす
現在、予測シートが対応している品種は「初恋」「おきなSP」および「ふゆいろ」の3品種2作型のみですが、部会では春夏作で6品種、秋冬作で10品種栽培しています。そこで、普及センターでは既存の予測シートを基に他の品種も予測できるような作型表を作成するために調査を続けています。
今後も産地全体で予測シートの活用が進むことで、より個々の農家の経営向上および儲かる産地の実現に向けて、普及センターではキャベツ部会の取り組みを支援していきます。