優れた特性として、果実肥大性が良いこと、ネットが密で盛り上がりが良いこと、糖度が高く、爽やかな甘みで食味が良いことが挙げられます。しかし、ネット発生前後に曇雨天に遭遇すると、「縦ネットの大割れによる太いネット(以下 太いネット)」が発生しやすいという問題があるため、生育特性に合わせた栽培管理が必要となります。
今回は、「イバラキング」の播種から収穫までの基本的な栽培管理について紹介します。
地温を十分に確保して発芽を揃える
種子は消毒済み(乾熱消毒)です。発芽を揃えるために地温は十分に確保してください(28~30℃)。地温が低いと、発芽の遅れ、バラつきが発生してしまいます。
また、つる割病発生圃場では耐病性台木に接ぎ木を行ってください。胚軸が「アンデス5号」や「オトメ」より太いため、台木の播種を慣行より1~2日早めると良いです。
定植は晴天が続く日を選ぶ
5月中旬収穫の作型までは、保温のため、内張カーテンと二重トンネルを装備した片側誘引(株間50cm程度)が理想です。5月下旬以降収穫の作型では、内張カーテンは不要となり、両側誘引(株間40cm程度)でも栽培が可能となります。
基肥施肥成分量は10a当たり窒素15kg、リン酸20kg、カリ15kgを目安として、土壌診断結果や有機物施用量を参考に加減してください。
定植は晴天が続く日を選び、午前9時頃の地温(地温が最も低くなる時間帯)が地下10cmで18℃以上を目安に行ってください。浅植えが基本ですが、接ぎ木部分が土に触れないように注意してください。
生育初期(交配期まで)はゆっくりと茎葉の伸長を促す
「イバラキング」は「アンデス5号」と比べると葉色は淡く、生育のスピードが早い傾向にあるのが特徴です。極端な換気や高温管理は避けて、ゆっくりと茎葉の伸長を促してください。
草勢が強すぎると太いネットの発生原因になり、地上部だけ生育がすすむと、根量が不足し、後半の萎れにつながります。
交配期に着果を安定させるために
ミツバチ交配が基本ですが、天候が悪い場合、他品種よりやや着果が劣ります。交配当日および前日まで曇雨天が続いた場合は、ホルモン剤を併用し着果を安定させてください。また、着果節位が離れると、肥大に大きな差を生じやすいため、連続着果としてください。摘果作業は受粉後七日程度、鶏卵大の大きさで速やかに実施します(写真1)。
太いネット対策はしっかりと
「イバラキング」は、他品種よりも太いネットの発生が問題になります(写真2)。
太いネットの発生要因として、①低夜温、②玉直しの遅れ、③ネット発生前の過剰な潅水、④生育初期からネット発生期の強草勢、⑤日中曇雨天条件下の多湿が挙げられます。しかし、太いネットの発生にはこれらの要因が単独で影響を及ぼしているのではなく、複雑に絡み合っているものと考えられるため、それぞれの対策が必要です。
① 装備の充実による夜間の低温遭遇回避
夜間の低温は、果皮を硬くするため、太いネットの発生を助長します。そのため、内張カーテン、トンネル被覆資材等保温装備を充実させ、ハウスの破れ等の補修を行い保温に努めてください。
②ネット発生前に玉直しを
マルチに接している部分に太いネットが形成されやすいため、玉直しを早めに行います。
③ネット発生前の潅水は少なめに
鶏卵大からの果実肥大が非常に良いため、ネット発生前に潅水すると、過剰肥大を招き、太いネットの発生を助長する場合があります。潅水は、ネットが全体に形成されてから行います。
④草勢を適度にコントロール
草勢が強すぎて、葉色が濃いような状況だと太いネットが出やすくなります。過度な施肥、換気、蒸し込みは控えて、じっくり生育させてください。
⑤日中曇雨天条件下における太いネット軽減対策
日中曇雨天条件の場合、一日中果皮が固い状態のため、太いネットが発生しやすくなります。果実周囲の湿度を少しでも下げるため、ハウス内の気温が10℃以上確保できていれば、トンネルの換気を行ってください。
収穫は肉質も確認して
糖度の上昇が果肉の成熟よりも早い品種であるため、試し切りを行い、糖度だけでなく、肉質を確認してから収穫してください(写真3)。
予防が大切、病害虫防除
「アンデス5号」「オトメ」と比較してうどんこ病が発生しやすいです。着果負担が大きくなるにつれ発病度が高まるので、予防を重点に防除を行ってください。