今回は、ニホンジカおよびキョンに関する現状と、農作物被害対策の基本を紹介します。
農作物被害状況
【ニホンジカ】
茨城県ではニホンジカの農作物被害は確認されていませんが、全国の農作物被害金額は約61億円(2023年度)で、全獣種のうちニホンジカが被害金額全体に占める割合は約40%となっています。近年、全国で生息域が広がる傾向にあり、生息数が多くなると農林業被害や自然生態系への影響も懸念されます。
【キョン】
茨城県ではキョンによる農作物被害は確認されていませんが、千葉県の房総半島南部と東京都伊豆大島に生息が確認されており、キョンによる全国の農作物被害金額は、約4百万円(2023年度)となっています。
生態
【ニホンジカ】
4つの胃をもつ反芻動物であるため、草本類を好み、植物であればほぼ何でも食べると言われています。出産は5~6月に、通常1頭を出産します。栄養状態にもよりますが、10年程度生存する個体もいると言われています。
【キョン】
中国南東部や台湾が原産で、1年を通じて繁殖します。1産1仔で早ければ生後半年で妊娠し、生後1年程度で初出産します。食性は草食性で木の葉や果実等を好み、千葉県等ではトマト等の野菜類や稲などの農作物被害が報告されています。
形態的特徴は、体長が1m以下、体高が50cm程度で、オスは頭に15cm程度の角をもちますが、メスには角がありません。また、濁った鳴き声も特徴的です。
農作物被害対策
野生鳥獣による農作物被害を防ぐには、侵入防止や捕獲、生息環境管理といった3つの被害防止対策を総合的に取り組むことが重要です。
●野生鳥獣を近づけない環境づくり
イノシシ等の対策と同様に、耕作放棄地の解消や薮の刈払い等により、野生鳥獣を近づけない環境づくりが必要です。また、収穫後の残渣は野生鳥獣にとってはエサになりますので、すぐにすき込む等の対策が重要です。
【ニホンジカ】
①電気柵による侵入防止
柵を越えて侵入されないように、電気柵は5段で下2段を20cm間隔、上3段を30cm間隔で設置する必要があります。ニホンジカを対象に電気柵(5段)を設置すると、イノシシの侵入を同時に防ぐことができます。
注意点
電気柵に雑草が接触すると、漏電により電圧が低下し、効果が低くなりますので、定期的な除草などの管理作業が重要です。
②ワイヤーメッシュ柵(物理柵)による侵入防止
ワイヤーメッシュ柵は、ニホンジカの跳躍力を考慮して、高さ2m程度が必要です。また、上から飛び越えること以外にも、下から潜り込むことも多くあります。そのため、定期的な点検や除草作業により、侵入防止効果を持続的に発揮できるように管理しましょう。
【キョン】
侵入防止柵による侵入させない対策
キョンは80cm程度の跳躍力があるとされ、侵入防止柵である電気柵やワイヤーメッシュ柵(物理柵)の高さは90cm程度が必要です。
また、侵入防止柵は設置して完了ではなく、点検等の維持管理が重要です。
県での取り組み
県では、ニホンジカやキョンをはじめとする野生鳥獣に対して、モニタリングと早期防除のため、センサーカメラによる監視を強化しています。また、これらの野生鳥獣の生態や対策技術を学ぶことができる「野生鳥獣による農作物被害対策研修」を開催しています。研修を通じて、正しい知識や被害対策の技術を学び、農作物被害を減らす対策を実践しましょう。
なお、キョンは、特定外来生物に指定されていることや千葉県で生息域が拡大していることを踏まえ、早期対応のため目撃情報等の把握に努めているところです。キョンを目撃または捕獲しましたら、茨城県生物多様性センター(029-301-2940)、各県民センター等、発見場所の市町村特定外来生物担当課まで連絡をお願いします。