2023年3月、一般社団法人全国農業協同組合中央会(JA全中)と都道府県農業協同組合中央会(JA都道府県中央会)、日本放送協会(NHK)は、東京都内で「第52回日本農業賞表彰式」を開催しました。4年ぶりの実開催となり、個別経営の部・集団組織の部・食の架け橋の部の3部門で大賞を受賞した7組、特別賞を受賞した4組に表彰状を贈りました(写真1)。
日本農業賞は、日本農業の確立を目指して意欲的に経営や技術の改善に取り組み、地域社会の発展に貢献している農業者や営農集団を表彰するものです。本県からは集団組織の部で「JAやさと有機栽培部会」が見事、大賞に輝きました。
そこで今回は、同部会における取組の一部を紹介いたします。
栽培5原則で有機栽培へのこだわり
「JAやさと有機栽培部会」は、1997年に設立され、石岡市でレタス、ニンジン、ネギ等の有機野菜を栽培しています(図1)。有機栽培とは、種播または植付け前2年以上、化学肥料や化学合成農薬を使用しないことを第三者機関によって確認されるなど、化学的に合成された肥料や農薬を使用しない畑で栽培することを基本としています。
化学肥料や化学合成農薬を使わないことから手間はかかりますが、食の安全・安心や有機栽培へのこだわりなどの取組が消費者から強い信頼を得ています。
【有機部会 栽培5原則】
1.化学肥料は使用しない。有機肥料100%で栽培
2.除草剤および土壌消毒剤は使用しない
3.化学合成農薬は使用しない
4.輪作・緑肥を重視する
5.ゲノム編集、遺伝子組み換えされた種子を使用しない
実践的な2年間の研修で独立を支援
同部会は、部会員の多くを地元以外の出身者が占めており、地域の担い手や新規就農希望
者の育成に積極的に取り組んできました。
JAやさとが「ゆめファームやさと研修制度」を開始し、就農希望者支援と地域農業の担い手育成のため、毎年一家族を受入れ、実践的な研修を2年間行った後、地域農業の担い手として送り出しています(図2)。具体的には、有機農業を学び、栽培から販売まで研修生が自ら行い、栽培に必要な技術は、実技を通して身につけていく流れです。研修生の出身地は、北海道から九州まで様々な地域に渡っており、これまで20家族以上を受入れてきました。
研修開始時から1人の農家として独立に向けた環境整備を進められるので、独立後は専業の有機栽培農家として着実に販売実績を上げることにつながっています。
消費者ニーズと生産者の思いをつなぐ
JAやさとでは、東都生協等を介して直接、顧客に野菜を提供する取組を行っています。2012年からは、JAやさとの農産物詰め合わせ「皮ごと丸ごとやさとの有機野菜セット」(写真2)を販売しています。このセットは、取引先から要望のあった新規作物を部会を中心に試験栽培等を実施した上で、順次追加するなど消費者ニーズへの対応に努めています。また、購入者に対し、定期的なアンケートにより顧客満足度調査を行い、野菜のリクエスト等を把握するニーズを掘り起こし、生産販売活動に繋げています。
そして、生産者の想いを伝えるため、個別包装する有機野菜に生産者のメッセージ入りカードを同封し、消費者の意見を把握するため、同封するカードの裏面に野菜購入者が意見を記載する欄を設け(写真3)、消費者の生の声が生産者に届く仕組みを取り入れ、消費者のさらなる満足を求めた活動を行っています。
「JAやさと有機栽培部会」は、これからも有機野菜の生産・販売をとおして、社会に貢献していくことでしょう。