メロンづくりに欠かせない条件である「水はけのよい土地」と「昼夜の寒暖差が大きい気候」に、土づくりや管理作業等生産者の努力が加わり、おいしいメロンが作られています。
鉾田市内には、JA茨城旭村とJAほこたの2つの大きな農協があり、それぞれブランド化に取り組んでいます。
JA茨城旭村
●二次元バーコードで糖度と食べ頃がわかる
JA茨城旭村では、甘くておいしいメロンを消費者に届けるために、玉の大きさやネットの張りなどの外観に加え、光センサーによって糖度を測定し、糖度基準を独自に設けています。生産者はその基準をクリアするため、高い技術で栽培に取り組んでいます。
光センサーで測定した糖度は、メロンに貼った二次元バーコード(写真1)で確認することができます。糖度が「秀」品よりもさらに高いメロンを、「特秀」とそれより上位の「プレミアム(極)」(写真2)に区分して販売しています。この取組は令和4年にテレビで放送され、翌日にはJA茨城旭村「直売所サングリーン旭」に「プレミアム(極)」を求める長い行列ができるほど反響がありました。
また、メロンは購入後に追熟させる必要があるため、食べごろが分かりにくいと言われますが、二次元バーコードを読み取ることで、追熟させる日数の目安が分かり、食べごろの判断ができるようになっています。
JAほこた
●良食味の「イバラキング」を導入
JAほこたでは、消費者の声に応え、贈答用の規格を設けるほか、品種導入にも消費者ニーズを重視し、栽培には一定の技術水準が必要となるものの、食味の良い県オリジナル品種「イバラキング」を導入しています。
令和3年産のイバラキングは、県内で約44ha栽培されています。そのうちの約39haはJAほこたで栽培されており(図)、イバラキング栽培面積の90%近くに及びます。JAほこた産イバラキングの認知度は年々高まっています。
●「顔」の良い「イバラキング」を作るために
「イバラキング」という名称には、全国一のメロン生産量を誇る茨城県の「メロンの王様(キング)として茨城の顔になってほしい」との願いが込められています。
JAほこたでは、メロン研究部で試作を実施し、上品でさわやかな食味の良さや低温期の肥大性が評価され、品種登録された翌年の平成23年には、メロン部会の指定品種になりました。しかし、栽培を重ねるうちに課題も明らかになっていきました。
メロンは食味の他、果皮のネットの出来具合も重視される果物です。生産者はそのようなメロンの果皮のことを「顔」と表現します。贈答用に使われるのは、きれいにネットが張っている「顔」の良いメロンです。
しかし、ネットができる時期に曇天や低温等の悪天候に遭遇すると太いネットができ、見た目の評価が落ちてしまいます。イバラキングは、悪天候の影響を受けやすく、太いネットが発生しやすい(写真3)という弱点を持っていることがわかり、研究部や関係機関で協力し、その対策に取り組みました。
試行錯誤を繰り返した結果、夜温の確保、早期の玉直し(横になっているメロンを立て直すこと)、適切な草勢の維持、曇天時のトンネル解放による除湿等が太いネットの発生を防ぐ対策として、有効であることがわかりました。これらの栽培技術は、栽培講習会や圃場巡回等を通し、徐々に浸透していきました。技術のポイントは「栽培マニュアル」にまとめられ、栽培に活用されています。産地や関係機関が一丸となって取り組んだ結果、イバラキングの弱点を克服しつつあり現在の面積まで生産が拡大しました。
環境モニタリング装置でハウス内を見える化
メロンは温度と湿度が、生育や品質に大きな影響を与えるため、その管理をどのように行うかが重要であり、これまで、葉の柔らかさ、葉色の濃さ、節間の長さなどを感覚的に評価して生育診断を行ってきました。
そこで環境モニタリング装置を活用して、生育診断の補助となる基準を見つけようと、JA、研究機関、普及センターが連携してハウス環境の見える化に取り組んでいます(写真4)。その他、普及センターでは、ネット形成期の温度湿度のデータを参考にしたネット品質の向上、高温期に適した新品種の導入等、メロンの安定生産による収益向上を目指して支援しています。
これからも消費者に喜ばれる高品質なメロンを作るために、生産者と関係機関の努力は続きます。生産者の粋を尽くしたメロンは、各JAの直売所等で購入できますので、ぜひご賞味ください。