なお、「恵水」の適期収穫に関する内容については、「ナシ「恵水」の高品質果実の収穫条件および適期収穫」をご参照ください。
適正着果数は10果/m²
高接ぎ樹7~8年生を用いて、樹冠面積1m²あたり着果量の違い(8果、10果、12果)が収量、果実重や糖度に及ぼす影響について、2年にわたり調査しました。結果は表1・2のとおりで、収量性や果実品質から総合的に判断すると、10果/m²区が最も適正であることが分かりました。また同試験区を設置した樹は、樹全体ではおおむね3果そうに1果の割合で、側枝1mあたりでは6果程度が着果していたことが分かり、これらの数値も目安として現地栽培指導において活用しています。
なお、長果枝は短果枝よりも果実肥大が劣る傾向がみられるため、長果枝部分に着果させる場合は前述の着果目安より減らして、良果のみ残しましょう。
着果量 | (t/10a) |
果重 | 糖度 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
果実割合(%) |
果実割合(%) |
Brix% | 果実割合(%) |
果実割合(%) |
|||
8果/m² | 4.0 | 557 | 88 | 65 | 12.9 | 97 | 50 |
10果/m² | 4.8 | 541 | 89 | 64 | 13.1 | 100 | 77 |
12果/m² | 5.1 | 504 | 77 | 46 | 12.7 | 93 | 23 |
注1)10a当たり収量は、樹冠占有率90%で換算
注2)試験樹は高接ぎ7年生
着果量 | (t/10a) |
果重 | 糖度 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
果実割合(%) |
果実割合(%) |
Brix% | 果実割合(%) |
果実割合(%) |
|||
8果/m² | 3.5 | 518 | 93 | 50 | 12.5 | 82 | 12 |
10果/m² | 4.4 | 506 | 88 | 55 | 12.5 | 80 | 16 |
12果/m² | 4.6 | 459 | 67 | 34 | 12.2 | 68 | 6 |
注1)10a当たり収量は、樹冠占有率90%で換算
注2)試験樹は高接ぎ8年生
修正摘果で小玉果を減らしましょう
「恵水」の特性として、果実重400g以下の小玉果では糖度が低く、また硬度が高く食味が劣る傾向があります。品質不良の果実の混入を低減するための方法として、修正摘果について検討しました。
生育途中の果実径と収穫時の果実サイズとの関係性を解析し、小玉果発生低減のための修正摘果基準を作成しました(表3)。作成した基準を用いて若木(本摘果:側枝1mあたり6果)の修正摘果を行ったところ、修正摘果を行わなかった樹や多着果にした樹(本摘果時:側枝1mあたり8果)に比べ、小玉果の発生率が低く、果実糖度が高いことが確認されました(表4)。
なお、当摘果基準は小玉果の摘果に用いるために作成しており、果実重が大きいほど誤差が大きいため、階級別発生率(玉流れ)の予測に用いる際は注意が必要です。
満開後日数 | (550-600g) |
(600-650g) |
(650-780g) |
(780g以上) |
|||
---|---|---|---|---|---|---|---|
90 | 55.9 1) | 58.4 | 63.6 | 66.2 | 68.8 | 71.3 | 78.1 |
100 | 68.3 | 70.4 | 74.7 | 76.8 | 78.9 | 81.0 | 86.5 |
110 | 76.9 | 79.1 | 83.5 | 85.6 | 87.8 | 90.0 | 95.7 |
120 | 82.5 | 84.9 | 89.8 | 92.2 | 94.6 | 97.0 | 103.3 |
130 | 86.7 | 89.4 | 94.8 | 97.4 | 100.1 | 102.8 | 109.8 |
90.0 | 93.2 | 99.7 | 102.9 | 106.1 | 109.3 | 117.7 |
注1)果実の平均横径 mm
注2)表の見方:満開後100日に果実の平均横径が70.4mm以下の果実は、収穫時に400g未満になる確率が高い
注3)果実の階級および基準重量は、茨城県青果物標準出荷規格「なし(新高・恵水等大玉系)」による
試験区 | 収量 |
果 |
果重 | 糖度 Brix% |
lbs |
pH | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
無 | 94.2 | 185 | 509ab | 80.0 | 4.8 | 12.2b | 4.9 | 5.03 | |
6果/側枝1m | 有 | 88.9 | 168 | 529a | 89.9 | 4.7 | 13.0a | 4.9 | 5.03 |
有 | 104.2 | 210 | 496b | 83.8 | 4.7 | 12.3b | 5.2 | 5.05 |
注1) 修正摘果は、平成29年および30年の果実による暫定基準(満開後100日で平均横径64.6mm)により実施
注2) 調査樹は「恵水」7年生樹(1株3樹植え1本主枝。1区3樹)
注3) Tukey-Kramer検定により、異なる英文字間で5%で有意
短果枝主体で安定生産
「恵水」はえき花芽の着生が少ないが、短果枝の着生が良好で、側枝上から発生する新梢数が少なく短果枝の維持も容易であることから、短果枝(2~3年枝)を主体とした側枝配置が可能です。側枝全体の50~70%程度を短果枝にすることで、えき花芽着生の多少に影響されずに安定して着果量を確保することができます。
なお、側枝候補枝の確保を目的として夏季(新梢伸長停止期)に新梢誘引を行う場合は、新梢を棚面に対して0~30°に誘引すると、えき花芽の着生が多くなります(表5)。ただし、「恵水」の新梢は「幸水」や「豊水」と比べて硬く、誘引の際に折損するおそれがあるため注意が必要です。誘引しづらい位置の新梢は、無理せずに新梢の半分から上の部分が棚面に対して0~30°となるように誘引しましょう。
年 | 試験区(誘引角度) | 葉芽数 個/新梢 |
花芽数 個/新梢2) |
えき花芽着生率 %2) |
---|---|---|---|---|
H29 | 新梢誘引区(0~30°) | 21.3 | 3.6a | 17.8a |
新梢誘引区(45°) | 25.1 | 1.0b | 5.1b | |
無処理区 | 27.8 | 0.2c | 0.8b | |
H30 | 新梢誘引区(0~30°) | 20.4 | 7.1a | 27.0a |
新梢誘引区(45°) | 24.6 | 2.8b | 11.0b | |
無処理区 | 29.0 | 2.0b | 7.7b |
1) 試験樹の樹齢 H29: 5年生 H30: 6年生
2) Tukey-Kramer法により各試験年において異なる英文字間で5%有意
生育初期の平均気温で収穫始期を予測
「恵水」の収穫期は例年9月上旬~下旬で、「豊水」と「あきづき」に重なります。収穫始期(※1)の目安は満開後約135日とされており、「豊水」の収穫始期と同時期ですが、「豊水」と比べて満開日が遅いことから、気象条件によっては収穫始期に差が生じます。出荷日程を決定するうえで収穫始期の情報は重要であるため、「恵水」の収穫始期予測方法を検討しました。
平成22年~令和元年の10年間における「恵水」の収穫始期は、平均で9月3日と「豊水」と同日でしたが、「豊水」に比べ最も早い年では4日早く、最も遅い年では5日遅くなりました。
「恵水」の収穫始期と生育期間中の平均気温との関係性を解析し、平均誤差2日以内(最大誤差3日)で収穫始期を予測できる予測式を作成しました(図)。なお、予測に用いた平均気温は農研機構が開発提供している1kmメッシュ農業気象データに基づいています。アメダス地点データを用いる場合は、各地域における予測式の適合度が異なる可能性があるため、検証のうえご活用ください。
(※1)収穫始期:適熟果の最初の収穫日で、連続して収穫を開始した日