今後、安定した農業経営のためには、国内だけではなく海外を販路の一つとして捉え、世界の市場に目を向けることがますます重要になると考えられます。また、世界中から観光客が日本に訪れ、インバウンド需要が高まるとともに、世界遺産に認定された「和食」や「日本産の食べ物」への関心も急激に高まっています。国としても、2020年に「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」を策定するなど、日本をあげて食品等の輸出への取組が行われているところです。
当課では、北米やアジアを主なターゲットに、海外での販売促進活動による県産農産物の知名度向上、既存販路の定着に加え、新たな産地の掘り起こしや新たな国や地域で市場の開拓に取り組んでいます。
農産物輸出の現状
茨城県では、産地や輸出事業者と連携して農産物の輸出促進に取り組んでおり、2022年度の農産物(青果物・米・畜産物)の輸出額は約13億1,600万円と過去最高を更新しました。2016年度と比較すると、この6年で輸出額は10倍に増加しました(図1)。
品目別では、タイ、シンガポールや香港などのアジア向けを中心に、カンショの輸出が堅調に増加するなど、青果物の輸出額が初めて5億円を突破しました。米は、香港およびシンガポール向けの輸出を中心に米国など他の国々への輸出も拡大しました。
畜産物は、常陸牛のタイ向け輸出が大きく回復するとともに、カナダ向けの新たな商流開拓の取組等により拡大しました。また、2022年度は東アジア圏での鶏卵不足を背景に、香港向けの鶏卵輸出が大幅に拡大しました。
販路の定着・拡大と、新たな市場の開拓
当課では、輸出にチャレンジする意欲のある産地や事業者等と連携しながら、海外での需要が拡大する、カンショ、米、常陸牛等を中心に、テスト輸送や海外販売店における試食販売などのプロモーションを通じて販路の定着・拡大を図るとともに、新たな市場の開拓に取り組んでいます。
【当課が実施する支援の例】
●産地と輸出事業者が連携して行う試食販売などのプロモーションを支援
●新たな国や地域における集中的なマーケティング、テスト販売等の支援
●国内外からのバイヤー招へい、商談会などの実施
●知的財産対策として、県育成品種などの海外商標権の取得
●輸出コーディネーターによる商談前後のフォローや各種相談の対応
これから輸出にチャレンジしようとする方へ
日本産農産物に対する海外のニーズは確実に存在すると考えており、国内だけではなく海外を販路の1つとして捉え、世界の市場に目を向けることが今後ますます重要になると考えられます。しかし、輸出が販路の1つとして定着し、経営の安定化、ひいては、儲かる農業に繋げるためには、産地や事業者が主体性をもって取り組むことが重要です。
また、「輸出すれば高く売れるだろう」という声をよく耳にします。もちろん日本産の中には海外産と明確に差別化できる品目はありますが、日本産と同等の品質で、価格も安価な海外産も多く存在します(図2)。
●東南アジアを中心に日本産青果物市場は拡大が続いている。安定供給と多品種・大ロットが強みの本県にとってはビジネスチャンス。
●一方ライバルは「世界(中国や韓国等)」であり、「品質」と「価格競争力」が鍵となっている。
(参考)青果物輸出のチェックポイント!
ポイント | 継続的な輸出に繋がっているケース | 単発的な輸出になりがちな(または商談が成立しない)ケース |
---|---|---|
主体性 | 自分が現地で売り込みたい | 県(商社)が売ってくれる |
輸出の捉え方 | 販路の多角化や経営を安定させたい | 輸出で儲けたい 物が余っている時にだけ輸出したい |
輸出量 | ロットが安定して確保できる | 少量・不安定 |
価格設定 | 現地市況を理解した上での持続可能な生産価格 | 日本の品質は高いという思い込みでの価格(価値を伴わない高額) |
その他 | ・キーマンとなるリーダーがいる ・現地要望(GAP等)に柔軟に対応できる(マーケットイン的) |
・産地の名称にこだわりすぎる ・日本の食べ方・価値観を優先(プロダクトアウト的) |
輸出を成功させるためには、海外の消費者が何を求めているかを理解する「マーケットインの発想」が重要です。当課には、輸出業務の専門家である「輸出コーディネーター」が在籍しています。輸出に必要な各種規制への対応や課題解決など、輸出に取り組む意欲のある方々へのアドバイスを行っております。
農産物の輸出についてご不明な点やご相談したい事があれば、当課までご連絡ください。