温室で咲く人気の花は?と問われたら、私はマメ科ヒスイカズラ属のStrongyldon macrobotrys(ヒスイカズラ)と答えます。オウムの嘴に似た形の花が房状につき、長さは約100cmと大型です。最大の魅力は翡翠色の花色で満開時は神秘的に見えます。
私が初めてこの花を見たのは30年以上前。英国ウィズレーガーデンの温室で、美しい花姿を見て感動した思い出は今も鮮明です。その後、筑波実験植物園から株を分けていただき水戸市植物公園でも花が咲くと、写真家の秋山庄太郎(1920〜2003)先生が来園され「ここの花は他よりも色が濃くて美しいんだよ」とお褒めの言葉をいただきました。自慢だった初代の株は、温室の透光性が悪く光不足が原因で枯死しました。冬は最低10℃以上、日当たりと湿度を好み、環境が悪い場所では育たないのです。
2021年、観賞大温室は再整備され明るい窓に交換されると、再び筑波実験植物園からヒスイカズラを寄付していただきました。渋谷区ふれあい植物センターからは元気な枝をいただき、挿し木をしたら100%発根。2系統を観賞大温室内の滝付近に植えました。
滝があるから湿度が高いと思ったら間違い。温室内は植物が育っていないため湿度不足で、さらに西日が当たるダブルパンチ。株を植付けて約1か月後に落葉を始めました。慌てて日よけを設置し、毎日定時に霧吹きを行って湿度を高め、環境づくりに徹しました。肥料は生育に応じて成分を考え、リン酸分の高い骨粉を多めに施したおかげか、3月に2系統合わせ約30の花房が見られました。この温室でヒスイカズラの花が見られたのは10年ぶりくらいかもしれません。元気に育ってよかった。神秘的なヒスイカズラの花は、4月で満開終了となりました。
落ちた花をドライフラワーにしたら、翡翠色の美しい乾燥花ができました。短時間で水分を飛ばすのが上手に作れる秘訣です。