水戸市植物公園で恒例になっているのが、5月4日の「植物園の日」に入園者と行うワタ(Gossypium spp)の種播きです。布団の中に入っているあの白く優しいモフモフしたものが綿で、Tシャツなどの生地になり英語でCOTTON(コットン)と言います。
語呂合わせで5月10日はコットンの日。原産地が世界各地の亜熱帯で発芽適温がやや高く、霜の心配がなくなった茨城県では種播きする日としてピッタリです。
ワタはアオイ科ワタ属の植物で、25〜35℃が生育適温です。当園で栽培しているのは栃木県真岡市付近で産した「真岡木綿」で、丈夫で質が良く絹のような肌ざわりだと好評です。
夏にオクラに似た黄色い花が咲きますが短命で、翌日には桃色になってしぼむ1日花です。8月末に果実が成熟すると膨らんでコットンボールになり、はじけると白い綿が顔を出します。私たちが利用する綿は種子の周りを守るように生える毛で、この綿毛を繊維として利用します。種子からは油がとれ食用油にも利用されます。
意外とワタのことを知らない・見たことがない方が多いので、種播き教室をしてワタの魅力を伝えているわけです。夏休み子ども教室を行った時、参加者の方から「ワタの種播きに参加した者です。うまく育ち花も咲きました」と報告を受け、大喜びしたところです。
大学の実習でもワタの種を播いて栽培し、秋に収穫すると冬に綿繰り機を使って綿毛と種子を分離させています。素手で綿毛を集める作業はなかなか難しく、根気が必要です。綿繰り機を使うと簡単に分離でき、学生に人気がある実習です。
そして私にとってワタといえば、マーガレット ミッチェル原作の名画「風と共に去りぬ」のシーンにつながります。主人公スカーレット オハラが綿花栽培で成功した大農園主の娘で、第2幕ではお嬢様の彼女がワタ畑で働くシーンがあり、ちょっと驚いたのを覚えています。
夕暮れ時、園内のワタ畑にいるとスカーレットのように夕陽に向かって「私は負けない」と以前は言いたかったのですが、最近はそんな気合いはなくなって、「ほどほどに頑張ろう」と思うようになったのは年を重ねた証拠かもしれません。